ジャン・ルメール

ジャン・ルメール（Jean Lemaire, 1598年 - 1659年）は、17世紀フランスを代表する画家の一人です。彼は特に建築物を描くことに卓越した才能を持っており、その作品は当時の建築様式や雰囲気を巧みに捉えています。また、同時代の画家ニコラ・プッサンとは非常に親しく、しばしば共同で作品を制作したことから、「ジャン・プッサン」または「ルメール＝プッサン」という名前でも知られています。プッサンとの密接な関係は、ルメールの画風にも大きな影響を与えたと考えられています。

ジャン・ルメールには弟のピエール・ルメールもおり、彼もまた画家でした。兄弟を区別するために、ジャンは「Gros Lemaire（大ルメール）」、ピエールは「Petit Lemaire（小ルメール）」と呼ばれることもありました。

生涯

ジャン・ルメールは、現在のセーヌ＝エ＝マルヌ県にあるダマルタン＝アン＝ゴエルで生まれました。1613年頃にはローマに移住していたという資料もありますが、確実なのは1624年にローマに修行に来たニコラ・プッサンの友人となり、助手として活動を始めたことです。プッサンの絵画作品において、背景に描かれる建築物や風景はルメールの手によるものが多く、二人の協力関係が窺えます。

ルメールは、室内画や風景画を得意とし、プッサンの影響を受けて神話を題材とした作品も多く描きました。特に遺跡や古代の建築物を描くことに長けており、これらの作品は彼の特徴的な画風をよく表しています。ローマでは、スペイン大使からの依頼でマドリードのブエン・レティーロ宮殿に飾るための作品を制作しました。これらの作品は、遺跡や隠者を題材としており、後にプラド美術館に収蔵されました。

1638年にはフランスに帰国し、ルイ13世のもとで絵画館の学芸員に任じられました。また、宰相のリシュリュー枢機卿からも絵画制作の依頼を受けています。1640年頃には、一時的にパリに滞在し、プッサンと共にルーブル宮殿の装飾画制作にも携わりました。1642年には短期間ローマに滞在しましたが、その後はパリやフランス北部の街ガイヨンで活動を続けました。

作品の特徴

ルメールの作品は、古典的な主題を扱いながらも、彼の独自の視点や繊細な筆致が特徴です。建築物や風景の描写に優れており、その構図は安定感があり、鑑賞者を静謐な世界へと誘います。プッサンとの共同制作では、二人の画風が見事に調和しており、お互いの才能が引き立てあっているのがわかります。彼の作品は、歴史的建造物への深い理解と、それを芸術的に表現する優れた能力を示しています。

参考文献

Luna, Juan José (1984). Claudio de Lorena y el ideal clásico de paisaje en el siglo XVII. Madrid: Ministerio de Cultura, Dirección General de Bellas Artes y Archivos. ISBN 84-500-9899-8.
プラド美術館のネット事典(Enciclopedia en línea)

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