ジャン・ワン

ジャン・ワン（Jian Wang、王 健）

中国を代表するチェリスト。1968年12月26日、中華人民共和国の西安市に生まれた。父はチェリストの王樹棠、母はフルート奏者という音楽一家に育つ。

音楽家としての歩み

1972年、父親の仕事に伴い上海市に移住。母と離れ、父と二人で暮らす生活が始まった。この頃から、チェリストである父親からチェロの基礎を学ぶ。その才能は幼くして開花し、わずか9歳で難関である上海音楽学院に首席で入学を果たした。

10歳を迎えた1979年、世界的バイオリニスト、アイザック・スターンが中国を訪れた際に彼の目に留まる幸運に恵まれた。この歴史的な出会いは、ドキュメンタリー映画『毛沢東からモーツァルトへ（原題：From Mao to Mozart: Isaac Stern in China）』として記録され、ジャン・ワンのその後のアメリカ留学への道を大きく開くことになった。さらに翌11歳には、早くもカミーユ・サン＝サーンスのチェロ協奏曲第1番を上海交響楽団と共演し、ソリストとしての非凡な才能を示した。

1985年、アメリカに渡り、イェール大学音楽学部に入学。名教師アルド・パリゾのもとで研鑽を積んだ。イェール大学で学んだ後、さらにジュリアード音楽院でも学びを深めている。学業を終えた後、彼は世界的名門クラシックレーベル、ドイツ・グラモフォンと中国人アーティストとして初めて専属契約を締結した。これは、当時のクラシック音楽界において画期的な出来事であり、彼のキャリアにおける重要な節目となった。

現在の活動と使用楽器

現在も、世界各地の主要なコンサートホールでソリストとして、あるいは室内楽奏者として精力的な演奏活動を展開している。その温かく情感豊かな演奏は多くの聴衆を魅了し続けている。演奏活動に加え、後進の指導や音楽界への貢献にも力を入れており、国際的な主要チェロコンクールで審査員を務めるなど、幅広い活動を行っている。

また、教育機関や音楽組織においても要職に就いており、王立バーミンガム音楽院のチェロ部門国際会長、上海交響楽団および杭州交響楽団の芸術委員を務めている。活動の拠点は上海とロンドンに置いている。

ジャン・ワンが現在使用する楽器は、著名な弦楽器製作一家、アマティ家によって1622年に製作された貴重なチェロである。この楽器は、故ソー・ウィン・ラム氏のご遺族からの厚意により貸与されている。

主要な録音

ドイツ・グラモフォンを中心に、数多くの録音をリリースしている。主なものとして以下が挙げられる。

"Presenting Jian Wang" (Delos Records, 1992)
"Olivier Messiaen: Quartet for the End of Time" (Gil Shaham, Paul Meyer, Myung-whun Chungと共演) (Deutsche Grammophon, 2001)
"The Baroque Album" (Deutsche Grammophon, 2003)
"JS Bach: The unaccompanied Cello Suites" (Deutsche Grammophon, 2005)
* "Reverie" (ギタリスト、ヨーラン・セルシェルと共演) (Deutsche Grammophon, 2007)

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