ジャン＝ピエール・モッキー

ジャン＝ピエール・モッキー：多才な映画人の軌跡

ジャン＝ピエール・モッキー（Jean-Pierre Mocky, 1933年7月6日 - 2019年8月8日）は、フランスの映画監督、俳優、脚本家、映画プロデューサー、編集技師として幅広く活躍しました。当初の公称生年月日は「1929年7月6日」でしたが、実際は1933年生まれでした。本名はジャン＝ポール・アダム・モキイェフスキ（Jean-Paul Adam Mokiejewski）といいます。

生い立ちと俳優としてのキャリア

1933年、フランスのニースで生まれたモッキーは、1942年にマルセル・カルネ監督の映画でエキストラとして映画界に足を踏み入れました。戦時中から戦後にかけては、タクシー運転手として生計を立てながら俳優活動を続けました。その中で、俳優ピエール・フレネーに見出され、彼の庇護を受けるようになります。その後、パリ国立高等音楽・舞踊学校でルイ・ジューヴェに師事しました。同級生にはジャン＝ポール・ベルモンドがおり、彼との混同を避けるため、芸名を「ジャン＝ピエール」に変更しました。

イタリアでの成功と監督への道

1952年には、ミケランジェロ・アントニオーニに見出され、オムニバス映画で主演を務めました。この作品をきっかけにイタリアで人気を博し、数々のイタリア映画に出演しました。1954年には、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品で助監督を務めたほか、フェデリコ・フェリーニ監督の作品にも助監督として参加しました。

1958年、クロード・シャブロル、フランソワ・トリュフォー、ジャン＝リュック・ゴダールといったヌーヴェルヴァーグの監督たちと出会い、親交を深めましたが、モッキー自身はヌーヴェルヴァーグの運動とは距離を置いていました。

独自の映画制作スタイル

1959年、ジョルジュ・フランジュ監督の映画で主演を務め、自ら映画化権を獲得した原作の脚本をトリュフォーと共同で執筆しました。当初はアラン・レネに監督を依頼しましたが断られ、最終的にフランジュが監督を務めました。この作品はゴダールに称賛され、映画祭で多くの賞を受賞しましたが、興行的には成功しませんでした。しかし、その後フランス映画の名作として評価を確立しました。

同年、ジャック・シャリエ主演の映画で監督デビューを果たしました。当初は友人のベルモンドを主演に考えていましたが、制作会社の意向でシャリエを起用することになりました。

その後も、1963年と1987年にベルリン国際映画祭コンペティション部門に監督作を出品するなど、意欲的に活動を続けました。

その他の活動と晩年

モッキーは、パリの映画館を買い取り、自作の上映やB級映画のセレクション上映を行っていました。また、自作の多くを統一デザインのジャケットでDVD化していました。

2019年に亡くなるまで、監督、俳優として精力的に活動を続けました。

主なフィルモグラフィー

モッキーは、監督作品だけでなく、俳優としても数多くの作品に出演しています。以下に主な作品を挙げます。

出演作品
『太陽と砂漠』 (1949)
『オルフェ』 (1950)
『敗北者たち』 (1953)
『夏の嵐』 (1954) - 助監督・出演
『逃亡者』 (1955)
『赤い灯をつけるな』 (1957)
『情報は俺が貰った』 (1958)
『壁にぶつかる頭』 (1959) - 脚本・主演
『カルメンという名の女』 (1983)
『映画というささやかな商売の栄華と衰退』 (1986)
『モーリス・ジャールの軌跡』 (2007)

監督作品
『今晩おひま?』 (1959)
『ソロ』 (1969) - 主演・監督・脚本
『暴かれたスキャンダル』(1974) - 主演・監督・原案・脚本・出演・プロデューサー
『リタン』 (1982) - 主演・監督・原案・脚本・出演・プロデューサー・編集
『ア・モール・ラルビトル』(1984)- 主演・監督・原案・脚本・出演・編集
『宝庫』 (1985) - 監督・製作・脚本
『黒い蘭の追憶』 (1995) - 監督・脚本
『怒り』 (2010) - 監督・脚本
『ムッシュ・コーシュマール』 (2015) - 監督・脚本・主演

モッキーの作品は、社会風刺やブラックユーモアを交えた独特な作風が特徴です。彼は、ヌーヴェルヴァーグの監督たちとは一線を画し、独自の映画制作スタイルを貫きました。彼の作品は、現在も多くの映画ファンに愛され続けています。

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