ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語

『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』

『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』（原題：الرحلة）は、サウジアラビアのマンガプロダクションズと日本の東映アニメーションが共同で制作したアニメーション映画です。この作品は静野孔文監督によって手掛けられており、アラビア語の「旅」を意味する原題が示す通り、深い物語が展開されます。

物語の主役はアウスという陶工の若者で、彼は義理の父ジュバイルとともにメッカを守るために戦う決意を固めます。アウスは過去の行いを悔いる一方で、故郷を守る責任から防衛隊へ参加します。

登場人物は個性的であり、傭兵の青年ズララは金銭のために戦う姿勢を持つ一方、隊の小隊長ニザールはメッカを守るための指揮をとります。アウスの妻ヒンドは、家族を思いながら彼を支え、非戦主義者の長老ムッタリブは、暴威に立ち向かう姿勢を崩しません。一方、敵として現れるアブラハは、メッカを征服すべく大軍を率いて侵攻します。彼は仮面をつけた戦士で、容赦なくメッカの文化を脅かす存在です。

本作品は、コーランの第105章「象」を題材にしています。この章は、メッカを襲撃したエチオピア軍が神の奇跡によって退けられた出来事を描いており、550年頃のイスラム史に基づいています。「象の年」と呼ばれるこの年には、預言者ムハンマドが誕生したとされています。エチオピア軍が敗北した背景には、天然痘の流行があったとも言われています。

制作は2017年11月に始まり、東映アニメーションとマンガプロダクションズがタッグを組んだことにより、アラビア語版と日本語吹替版が同時に制作されました。監督の静野孔文をはじめ、キャラクターデザインは岩元辰郎、音楽を和田薫が担当しています。総製作費は約1000万ドルから1500万ドルで、2020年2月には制作が完了しました。

本作は2020年にカンヌ映画祭での初上映を予定していましたが、新型コロナウイルスの影響で2021年に延期されました。中東・北アフリカ地域ではVOXシネマズによって劇場公開権が保有され、2021年6月17日には公開がスタート。一方、日本国内では2021年6月25日に公開され、英語字幕のついた日本語吹替版も上映されました。その後、英語版『The Journey』は北米で2022年4月に、ドイツ語版は同年6月にDVDおよびBlu-rayとしてリリースされています。

この映画の魅力は、アラビアの文化と歴史が色濃く反映されたキャラクターたちや、壮大な物語の展開です。観る者に深い感動と共感を呼び起こす作品であり、世界中の観客に強く訴えかけます。

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