ジュゼップ・バルトリ

ジュゼップ・バルトリ・ジュイウ：激動の時代を生きた芸術家の軌跡

1910年、スペイン・バルセロナで生まれたジュゼップ・バルトリ・ジュイウは、画家、イラストレーター、そして著作家として活躍した20世紀を代表する芸術家の一人です。彼の生涯は、スペイン内戦という激動の時代と深く結びついており、その経験は彼の芸術作品に大きな影響を与えました。

若い頃は新聞社のイラストレーターとして働き、労働運動にも積極的に関わっていました。スペイン内戦勃発後、彼は共和国派として戦場に参加しますが、1939年、祖国スペインを離れ、フランスへと亡命します。しかし、フランスでもナチスの占領下で強制収容所へと送られるなど、過酷な日々を過ごしました。

幾多の困難を乗り越え、1943年にはメキシコへたどり着きます。当時、メキシコには多くのスペイン人亡命者がおり、彼らとの交流を通して、バルトリは新たな創作活動の場を築き始めました。メキシコ滞在中には、あの有名な芸術家フリーダ・カーロと出会い、3年間、ラブレターを交わすなど、親交を深めました。この時代、フランスの強制収容所で描いたイラスト集『Campos de Concentracion 1939-1943』を出版するなど、彼の芸術活動は着実に発展していきます。

その後、1946年にはアメリカ合衆国ニューヨークへ渡り、脚本家、芸術家、著作家として多様な活動を展開しました。旅行雑誌や、サタデー・イブニング・ポスト誌の増刊誌への寄稿、ハリウッドでの舞台芸術家としての仕事など、精力的に活動の場を広げていきます。しかし、マッカーシズムの時代、ハリウッド・ブラックリストに載せられるという苦境にも直面することとなります。

イラストレーターとしても才能を発揮し、『ロビンソン・クルーソー』や『ガリヴァー旅行記』のフランス語版への挿絵制作など、幅広い分野で活躍しました。また、ウィレム・デ・クーニング、フランツ・クライン、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコといった著名な芸術家たちと10th Street Groupのメンバーとして活動し、現代美術の潮流にも深く関わっていました。

1973年には、マーク・ロスコ賞を受賞するなど、その芸術的才能は高く評価されました。スペインが民主化を果たした1970年代になって初めて、祖国スペインへの帰還を果たしました。そして1995年、ニューヨークにてその生涯を閉じました。

バルトリの死後も、彼の作品は人々の心を捉え続けています。2015年には、フリーダ・カーロとの間に交わされた手紙や詩のコレクションが13万7000ドルで落札されるなど、その価値は高く評価されています。さらに2020年には、フランスのイラストレーター、オーレル監督によって彼の生涯を描いたアニメーション映画『ジュゼップ 戦場の画家』が製作され、セザール賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。日本でも公開され、高い評価を得ました。

ジュゼップ・バルトリ・ジュイウの生涯は、芸術家としての才能と、激動の時代を生き抜いた強靭な精神、そして人間としての深い愛情が織りなす、感動的な物語です。彼の作品は、戦争と亡命という過酷な経験を通して、人間の尊厳と生命の輝きを描き出し、現代社会においても、深い共感を呼び起こし続けています。彼の芸術は、歴史の闇と光を映し出し、未来への希望の光を指し示す、貴重な遺産と言えるでしょう。

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