ジュディ台風

ジュディ台風は、1953年（昭和28年）5月に太平洋上で発生した熱帯低気圧が発達したものです。国際名は「ジュディ（Judy）」と名付けられました。この台風は、日本の台風呼称に関する歴史において、非常に特筆すべき存在です。当時、日本国内で発表される台風には外国の女性名が用いられていましたが、昭和28年6月4日、当時の日本の中央気象台（現在の気象庁）は、今後の台風呼称について、女性名ではなく発生順に番号を用いることを発表しました。この発表の直前に発生し、進行中であったジュディ台風は、結果として日本で女性名で呼ばれる最後の台風となり、同時に終戦後初めて番号（昭和28年台風第2号）が付与された台風という、歴史的な位置づけを持つことになりました。

この台風は、1953年5月29日の午後3時（協定世界時では同日午前6時）に、カロリン諸島の北緯8度3分、東経145度2分の海域で台風へと成長しました。発生後、台風はゆっくりと西へ進み続け、6月2日にはフィリピンの東の海上まで接近。この頃には勢力を強め、中心気圧は最低940ミリバールまで低下しました。その後、6月4日にフィリピンのルソン島に上陸したのち、進路を北向き、さらに北東へと変えました。6月6日頃からは速度を増し、日本の九州地方に接近。翌6月7日の午前9時頃、熊本県八代市付近に上陸しました。上陸時の観測データとしては、鹿児島県枕崎市で最大風速26.7メートル、最大瞬間風速39.1メートルを記録しています。九州に上陸した台風は、そのまま西日本を縦断し、同日午後9時（協定世界時では同日正午）には、北緯36度1分、東経136度9分の地点で温帯低気圧に変わりました。なお、この温帯低気圧の消滅地点については、一部の資料で山梨県甲府市の北西とする記述も見られます。また、このジュディ台風の日本への上陸は、統計を取り始めて以降、年間で4番目に早い記録でした。

ジュディ台風は、通過した各国に被害をもたらしました。フィリピンでは、6月5日に当時のエルピディオ・キリノ大統領がルソン島への救援活動のために全政府機関の動員を指示したという記録が残っていますが、具体的な被害規模は明らかになっていません。台湾では、台風が接近した6月6日頃に、55メートルを超える強風と約5メートルもの高い波に見舞われ、これによって子供を含む40名が犠牲となりました。

日本においては、台風本体の勢力に加え、刺激された梅雨前線の影響も伴い、九州から中部地方にかけての非常に広範囲で被害が発生しました。人的被害としては、37名が死亡、17名が行方不明となり、56名が負傷しました。住家への被害も甚大で、1,802棟が損壊し、33,640棟が床上または床下浸水に見舞われました。農地にも大きな影響があり、74,353ヘクタールが被害を受けました。さらに、漁業や海運にも影響が出ており、船舶にも被害が及びました。被害を受けた船舶の隻数については、資料によって差異があり、139隻とするものや、別の資料では64隻あるいは236隻とする報告が見られます。ジュディ台風は、このように広範な被害をもたらしただけでなく、日本の気象観測史において、台風の呼び方を変えるきっかけとなった歴史的な台風としても記憶されています。

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