ジュール・デルサール

ジュール・デルサール（Jules Delsart, 1844年 11月24日 - 1900年 7月3日）は、19世紀後半のフランスを代表するチェリストであり、優れた教育者でした。特に、セザール・フランクによる名作ヴァイオリンソナタをチェロとピアノのために編曲し、この作品がチェロの重要なレパートリーとして定着する上で果たした役割によって、今日最もよく知られています。音楽学者リンダ・マクレガーは、同時代のフランスにおける最も優れたチェリストの一人として彼を挙げ、その技術の確かさ、精緻なボウイング、そして大きくはないものの美しい音色を高く評価しています。デルサール自身、1689年製のストラディヴァリウス「アルキント」を愛用していました。

生涯

デルサールはフランス北部のヴァランシエンヌに生まれました。地元の音楽アカデミーでチェロの手ほどきを受けた後、パリ音楽院に進み、1866年にはチェロ演奏で最高賞を獲得しています。主にオーギュスト・フランショームに師事し、1884年にその師が亡くなった後、パリ音楽院のチェロ科教授の職を引き継ぎ、生涯その任を務めました。デルサールの指導のもとからは、ポール・バズレール、ルイ・フォイヤール、マルセル・カサドシュ、ルイ・フルニエといった、後に名を成す多くのチェリストたちが巣立っています。

音楽院卒業後は、ヨーロッパ各地で精力的な演奏活動を展開し、大きな成功を収めました。1881年2月26日には、サル・プレイエルにてマリー・ジャエルのチェロソナタを、作曲者自身のピアノ伴奏で初演しています。翌1882年には、ジャエルからチェロ協奏曲の献呈を受けています。ロンドンにも度々渡り、1891年 11月25日にはセント・ジェームズ・ホールで、ダーヴィト・ポッパー、エドワード・ハウエルと共に、ポッパーの3台のチェロと管弦楽のための『レクイエム』を初演しました。また、1892年にはサン＝サーンスのチェロとピアノのための『Chant saphique』作品91を初演しており、この作品も彼に献呈されています。その他にも、ポッパーの『ノクターン』やレオン・ボエルマンのチェロソナタなど、数多くの作品が彼に捧げられています。

ソロ活動に加え、デルサールは室内楽の分野でも重要な役割を果たしました。1875年以降、ヴァイオリニストのマルタン・ピエール・マルシックが設立したマルシック四重奏団にチェリストとして加わり、当時パリで最も高く評価される弦楽四重奏団の一つとして名声を博しました。また、アンドレ・メサジェ（ピアノ）、ギヨーム・レミー（ヴァイオリン）と共に、1882年にエルネスト・ショーソンの『ピアノ三重奏曲ト短調』作品3の初演も行っています。著名なヴァイオリニスト、パブロ・デ・サラサーテが率いたトリオでも演奏するなど、幅広い室内楽活動を行いました。

チェロに加えて、デルサールは1887年頃からヴィオラ・ダ・ガンバの演奏も始め、折に触れてその音色を披露しました。古楽器への関心を深めた彼は、ルイ・ディエメ（ハープシコード）、ルイ・ファン・ヴァフェルゲム（ヴィオラ・ダモーレ）、そしてグリレ（フィドル）と共に、古楽器協会（Société des Instruments Anciens）を設立しました。この協会はその後10年間にわたりヨーロッパ各地で成功を収めることになりますが、デルサールが参加したのは設立当初の数年間のみで、彼が脱退した後は弟子のジョルジュ・パパンやマルセル・カサドシュが協会の活動に参加しました。

デルサールは1900年 7月3日にパリでその生涯を閉じ、ペール・ラシェーズ墓地に埋葬されました。故郷のヴァランシエンヌにある美術館（Musée des Beaux Arts）には、ジャン＝アンドレ・リクセンとユリエン・デクレによって描かれた彼の肖像画が収蔵されています。また、ヴァランシエンヌには彼の功績を讃え、「ジュール・デルサール通り（Rue Jules Delsart）」と名付けられた通りが存在します。

主な編曲作品

ジュール・デルサールの編曲作品の中で最も重要なのは、セザール・フランクの『ヴァイオリンソナタイ長調』をチェロとピアノのために書き直した版です。この編曲はフランク自身から許諾を得て作成され、現在ではチェロの基礎的なレパートリーとして欠かせない存在となっています。このチェロ版は、原曲のピアノパートはそのままに、ヴァイオリンパートをチェロのために移調・改変したものであり、近年では信頼できる文献に基づいた校訂を経て、原典版としてヘンレ社からも出版されています。その他にも、マスネのオペラ『タイス』から有名な「瞑想曲」や、ガブリエル・フォーレのピアノ曲『3つの無言歌』作品17をチェロとピアノのために編曲しており、これらもチェロ奏者によってしばしば演奏されています。

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