ジュール＝アレクサンドル・グリューン

ジュール＝アレクサンドル・グリューン（Jules-Alexandre Grün、1868年5月26日 - 1938年1月24日）は、フランスの画家、ポスター画家、そして挿絵画家として、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍しました。

略歴

パリで生まれたグリューンは、幼い頃から芸術の才能を発揮し、風景画家のラヴァストル（Jean-Baptiste Lavastre）やアントワーヌ・ギュメに絵画を学びました。ラヴァストルはパリ、オペラ座の美術監督を務めた人物としても知られています。グリューンは油絵画家として、ロココ時代の画家シャルダンの影響を受け、日常生活の風景や人物の肖像画を多く描きました。彼の作品は、温かく、親しみやすい雰囲気が特徴です。

1890年、グリューンは劇作家で作詞家のレオン・グザンロフ（Leon Xanrof:本名 Léon Alfred Fourneau）と出会い、商業美術の世界に足を踏み入れます。「Cocorico」や「ラシエット・オ・ブール」といった雑誌に挿絵を提供し、その才能を開花させました。同じ年、軍服姿で歌う歌手でコメディアンのポラン（Polin:本名 Paul Marsalés）とポスター制作の契約を結び、ポスター画家としてのキャリアをスタートさせます。1890年から1931年の間に、グリューンは約135点ものポスターを制作しました。これらのポスターは、モンマルトルのカフェ・コンセールからの依頼や、旅行会社からの依頼によるものが多く、当時のパリの賑わいや華やかさを伝えています。

油絵画家としての活動も継続し、1909年にはフランス芸術家協会によるサロンの開催30周年を記念した絵画を制作。この作品には、当時の最新ファッションが描かれており、時代を映す鏡としての役割も果たしています。また、同時代の画家たちの集まりを描いた作品も残しており、当時の芸術家たちの交流を垣間見ることができます。彼の代表作としては、「晩餐の終わり」などが挙げられます。

1904年にパリで結婚し、私生活も充実させていきました。1920年代には、アルゼンチンの画廊で3度個展を開催し、国際的な評価も高めました。しかし、1934年にパーキンソン病を発症し、惜しまれつつも作品制作から引退。1938年にパリで生涯を閉じました。

グリューンの作品は、油絵、ポスター、挿絵と多岐にわたります。彼の作品からは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリの文化や風俗、人々の生活を鮮やかに感じ取ることができます。特にポスター作品は、モンマルトルの華やかな雰囲気を伝える貴重な資料となっています。

主な作品

油絵
「読書する女性」
「花」
「庭での休息」
ポスター・挿絵
「Folies Bergère」
「La Loïe Fuller」
「Théâtre de la Renaissance」
「Bal du Moulin Rouge」
「Cocorico」
* 「Alhambra」

ジュール＝アレクサンドル・グリューンは、時代の空気を敏感に感じ取り、それを作品に反映させる才能に恵まれた芸術家でした。彼の作品は、今もなお、多くの人々を魅了し続けています。

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