ジョコ・ウィドド

ジョコ・ウィドド：インドネシアの庶民派大統領

ジョコ・ウィドド（通称ジョコウィ）は、1961年ジャワ島スラカルタで生まれました。大工の貧しい家庭に育ち、幼少期は貧困の中で過ごしました。しかし、彼は困難を乗り越え、着実にキャリアを積み重ね、インドネシアの第7代大統領にまで上り詰めた人物です。

生い立ちとキャリア

貧困の経験は、ジョコウィの政治姿勢に大きな影響を与えました。官僚主義への不信感と、庶民の視点を持った政策立案は、彼の政治家としての活動の原点と言えるでしょう。

ティルトヨソ小学校卒業後、ソロ第1中学校に進学。高校進学は失敗したものの、ガジャ・マダ大学林業学部に進学し、木材加工について学びます。卒業後、アチェ州の木工業会社に就職するも、社風に馴染めず、叔父の経営する木材会社を経て、1988年に自身の家具製造輸出会社を設立しました。

順調に事業を拡大していましたが、詐欺被害による倒産を経験。しかし、母からの借金を元手に会社を再建し、ヨーロッパ企業との取引を通じて成功を収めました。この経験は、後の都市開発政策にも活かされています。

地方政治家としての活動

2005年、闘争民主党の候補としてスラカルタ市長選に出馬し当選。ヨーロッパ式の都市計画を取り入れ、市場、歩道、公園の整備、医療保険改革、文化振興など、数々の政策を推進しました。市民との意見交換を積極的に行い、公正な姿勢が支持を集め、2010年には圧倒的な得票率で再選を果たしました。

2012年にはジャカルタ首都特別州知事に就任。低所得者向け医療サービスの導入や、老朽化した市場の改修、スラム再生計画など、民衆のための政策に力を入れて取り組みました。一方で、医療機関の負担増加や財政負担の大きさといった課題も抱えました。また、汚職疑惑の浮上していた州政府幹部の更迭も実行し、行政改革にも着手しています。

インドネシア大統領

2014年に行われた大統領選挙では、「政治変革」と「汚職撲滅」を掲げ、当選。地方政治家から大統領になったジョコウィは、インドネシアにおいてエリート出身者や軍人出身者ではない初めての国家元首でした。

当初は野党勢力の過半数によって政権運営は困難と予測されましたが、議会勢力の均衡状態を巧みに利用し、政権運営を維持しました。対立する野党との関係改善にも努め、2019年にはプラボウォ氏を国防相に抜擢するなど、政治的駆け引きにも長けた手腕を示しました。

大統領としての政策には、大規模な電力インフラ整備、燃料費補助金カット、OPECへの再加盟（のちに脱退）、LNG政策、海洋国家構想、麻薬対策などがあります。特に海洋国家構想では、海洋資源の活用、領海内の違法漁業取り締まり強化、海軍力の増強などを掲げ、強硬な姿勢も見せました。麻薬対策では、死刑執行を断行し、国際的な批判も招きました。

外交活動

積極的な外交活動も展開し、中国、日本、インド、ASEAN諸国などとの関係強化を図りました。経済協力に加え、安全保障面での協力も重視し、中国との関係強化を目指す一方で、南シナ海問題では対話と強硬策を併用するバランス感覚を示しました。

人物像

ジョコウィは、現場主義で知られています。大統領就任後も、インドネシア各地を精力的に視察しました。庶民派として知られ、アメリカ合衆国の大統領であったバラク・オバマ元大統領と比較されることも少なくありません。趣味はヘヴィメタル鑑賞と歌唱であり、ロックフェスティバルへの参加や、メタリカのベーシストからの贈り物エピソードなどが知られています。

家族

1986年に結婚したイリアナとの間に2男1女をもうけています。長男のギブラン・ラカブミン・ラカはスラカルタ市の市長を務めていますが、2024年の大統領選において副大統領候補への立候補を巡り、憲法裁判所の判断が物議を醸しました。

ジョコ・ウィドドは、貧困からのし上がり、地方政治家から国家元首にまで上り詰めた、類まれな人生を送った人物です。彼の政策や行動は、インドネシアの未来に大きな影響を与え続けています。

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