ジョセフ・アヴェノル

ジョセフ・ルイ・アン・アヴェノル：国際連盟事務総長と第二次世界大戦

ジョセフ・ルイ・アン・アヴェノル (1879-1952) は、フランスの官僚であり、国際連盟の第2代事務総長として知られています。しかし、彼の在任期間は、第二次世界大戦前夜の複雑な国際情勢の中で、様々な論争を巻き起こし、現在でも歴史家の間で議論の的となっています。

初期のキャリアと国際連盟への関与

アヴェノルは、フランス中産階級のカトリック家庭に生まれました。1905年、フランス財務省に入省し、財務検査官、その後金融監督官としてキャリアを積みます。第一次世界大戦中はロンドンのフランス大使館に勤務し、戦後の復興にも貢献しました。1919年には最高経済評議会常任委員に就任するなど、フランス政府内での地位を確固たるものにしていきます。

ヴェルサイユ条約締結後の1920年代、アヴェノルは国際連盟の経済・金融部門に配属され、国際会議のフランス代表を務めます。彼の能力は高く評価され、1922年には財務官、1923年には事務次長に昇進します。この間、彼は中央・東ヨーロッパの経済復興に尽力し、1928年には中華民国に特使として派遣されるなど、国際舞台での活躍が目覚ましいものとなりました。

国際連盟事務総長への就任と困難な時代

1932年、国際連盟事務総長エリック・ドラモンドの後任問題が浮上した際、アヴェノルは有力候補に挙がりました。これは英仏間の秘密協定に基づくものでしたが、ドラモンド自身はアヴェノルを後任に反対し、フランスに他の候補者を提示するよう働きかけました。しかし、フランス政府はドラモンドの意向を無視し、アヴェノルはイギリス、日本、イタリア、ドイツなどの支持を得て、最終的に事務総長に選出されました。

アヴェノルが事務総長に就任した時期は、国際連盟にとってまさに試練の時代でした。満州事変による日本の脱退、第二次エチオピア戦争など、国際社会は緊張感に包まれていました。アヴェノルは、特にイタリアの行動に消極的な対応を取り、イタリアの侵略行為を容認する姿勢を示したため、後世から強い批判を浴びることになります。イタリアに対する経済制裁は効果がなく、1936年にはイタリア領東アフリカが成立し、国際連盟の権威は大きく失墜しました。

ナチス・ドイツの台頭とアヴェノルの対応

1930年代後半、ナチス・ドイツの台頭は、国際連盟にとってさらに大きな脅威となりました。1938年のアンシュルス（オーストリア併合）では、アヴェノルは加盟国リストからオーストリアを削除し、オーストリア人職員を解雇するという決定を下しました。また、ポーランド侵攻とダンツィヒ編入に対しても、有効な対抗策をとることはありませんでした。

1940年6月、独仏休戦協定が締結されると、アヴェノルは国際連盟のイギリス人職員を解雇し、ヴィシー政権のペタン首相に忠誠を誓う書簡を送付しました。この行為は、アヴェノルがナチス・ドイツとヴィシー政権に協力したことを示す明白な証拠とみなされ、彼に対する批判をさらに強めることになりました。


晩年と死後

1940年8月、アヴェノルは国際連盟事務総長を辞任し、アイルランド人のショーン・レスターが後任となりました。その後、フランスに戻り、ヴィシー政権で役職を得ようとしたものの、ドイツ軍に逮捕される危険性からスイスに逃亡しました。第二次世界大戦後もスイスに留まり、1952年に心臓発作で死去しました。

アヴェノルの生涯と行動は、複雑で議論の多いものです。彼の国際連盟事務総長としての在任期間は、第二次世界大戦前夜の国際情勢を反映しており、その対応の是非については、現在もなお多くの歴史家によって様々な角度から研究・考察されています。彼の決断が、後の世界大戦にどのように影響を与えたのか、そして、国際機関のリーダーとしての責任とは何かという点を考える上で、アヴェノルの例は貴重な教訓となるでしょう。

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