ジョセフ・カサブブ

ジョゼフ・カサブブ：コンゴ民主共和国初代大統領の生涯

ジョゼフ・カサブブ（Joseph Kasa-Vubu, 1915年 - 1969年3月24日）は、コンゴ民主共和国の政治家であり、同国がベルギーから独立した直後の混乱期に初代大統領を務めました。彼の政治的キャリアは、コンゴの独立とそれに続く内戦、そして最終的にはクーデターによる失脚という激動の時代と深く結びついています。

独立前の経歴

カサブブは、ベルギー領コンゴ（現在のコンゴ民主共和国）西部のチェラで生まれました。1928年から1936年までカトリックの宣教師から教育を受け、その後、ザンビアのカブウェにあった神学校で神学と哲学を学び、教師としての道を歩み始めました。この時期の教育は、彼の後の政治思想や行動に大きな影響を与えたと考えられます。

独立後の政治

コンゴが1960年6月30日にベルギーから独立すると、カサブブは初代大統領に就任しました。彼はコンゴ川下流のコンゴ族を主体としたコンゴ族同盟（ABAKO, アバコ党）のリーダーであり、独立運動の中心人物の一人でした。しかし、独立直後から、保守的なカサブブ大統領と国家主義的なパトリス・ルムンバ首相との間に深刻な対立が生じました。この対立は中央政府の機能を麻痺させ、コンゴは政治的、軍事的な争いと地方の分離主義運動によって急速に崩壊へと向かいました。これが、いわゆる「コンゴ動乱」の勃発です。

1960年9月5日、カサブブはルムンバを更迭するという決断を下しましたが、ルムンバ内閣もカサブブの解任を決議し、事態は膠着状態に陥りました。この政治的危機は、9月14日に陸軍のジョセフ＝デジレ・モブツがカサブブ側についてクーデターを起こし、権力を掌握することで打開されました。ルムンバはその後、カタンガ国で分離主義者に捕らえられ、悲劇的な死を遂げました。

カサブブはその後、弱体化した政権を5年間運営しました。1964年6月には、カタンガ国の独立を主張していたモイーズ・チョンベを首相に任命するとともに、反政府左翼勢力に対抗するためにヨーロッパ人傭兵の投入を認めました。しかし、彼の政権は安定せず、1965年11月25日にはモブツによる2度目のクーデターが起こり、カサブブは退任を余儀なくされました。モブツは自らが国家元首に就任することを宣言し、カサブブは自宅で軟禁状態に置かれ、4年後の1969年にその生涯を閉じました。

ジョゼフ・カサブブの生涯は、コンゴ民主共和国の独立とそれに続く混乱、そして政治的リーダーシップの複雑さを象徴しています。彼の決断と行動は、コンゴの歴史に大きな影響を与え、今日においてもその評価は分かれています。

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