ジョルジュ・ドン

ジョルジュ・ドン（Jorge Itovich Donn, 1947年2月25日 - 1992年11月30日）は、アルゼンチン出身の傑出したバレエダンサーです。ブエノスアイレスでロシア移民の家庭に生まれ、5歳でテアトロ・コロン付属のバレエ学校に入学し、幼少期からバレエの才能を開花させました。

1963年、ドンは人生の転機となる出来事を経験します。アルゼンチンを巡業していたモーリス・ベジャール率いる20世紀バレエ団の公演を観て、その芸術性に感銘を受け、フランスへの渡航を決意しました。ベジャールに才能を見出されたドンは、入団後数年でソリストとして頭角を現し、その類まれな表現力と卓越した技術で観客を魅了しました。

1966年、『ロミオとジュリエット』での生き生きとしたロミオ役は、彼の名を一躍有名にしました。その後も、『火の鳥』、『ディオニソス』など、数多くのベジャール振付作品で初演を務め、そのキャリアを輝かしいものにしました。特に、1979年に初演された『ボレロ』は、ドンを語る上で欠かせない作品です。それまで女性が踊るものとされていたメロディを、男性舞踊手として初めて踊り、その革新性と情熱的なパフォーマンスは、バレエ界に大きな衝撃を与えました。

1981年には、映画監督クロード・ルルーシュの『愛と哀しみのボレロ』に出演し、バレエファンだけでなく、一般にもその名を知られるようになりました。この映画は、彼のバレエダンサーとしての魅力を余すところなく伝え、世界中に多くのファンを獲得しました。

1980年、ドンは20世紀バレエ団の芸術監督に就任し、バレエ団の発展に尽力しました。さらに1988年には、自身の理想とするバレエを追求するため、ヨーロッパ・バレエ団を旗揚げし、精力的な活動を続けました。しかし、その矢先、エイズに侵され、1992年11月30日に45歳という若さでこの世を去りました。

ジョルジュ・ドンの主なレパートリーには、『ロミオとジュリエット』、『火の鳥』、『ディオニソス』、そして『ボレロ』など、ベジャール作品が多く含まれています。彼のバレエへの情熱と、卓越した芸術性は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。彼の人生は、まさにバレエに捧げられたものであり、その功績は永遠に語り継がれるでしょう。

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