ジョルジョ・ナポリターノ

ジョルジョ・ナポリターノ：イタリア共和国の歴史を刻んだ人物

ジョルジョ・ナポリターノ (1925年6月29日 - 2023年9月22日) は、イタリアを代表する政治家であり、同国第11代大統領として歴史に名を刻んだ人物です。彼の生涯は、激動の20世紀イタリアと深く結びついており、レジスタンス活動から始まり、長きにわたる政治活動、そして大統領としての重責を担うまで、数々の重要な役割を歴任しました。

ナポリに生まれたナポリターノは、ナポリ大学法学部を卒業後、俳優として活動する傍ら、ナポリ方言によるソネット集を出版するなど、多様な才能を開花させました。第二次世界大戦中は、ファシスト政権に対抗するレジスタンス運動に参加し、戦後にはイタリア共産党に入党。若くして党の青年指導者として活躍しました。1953年の代議院選挙で初当選を果たして以来、長年にわたって代議院議員を務め、党内での地位を着実に高めていきました。1981年には党代議院議員団長に就任し、党内における影響力を強めました。

彼の政治経歴は、単なる党派活動にとどまりませんでした。彼は、代議院議長、内務大臣、そして欧州議会議員など、さまざまな要職を歴任。中でも、1996年のプロディ政権における内務大臣としての経験は、彼の大統領就任への道を切り開く上で重要な役割を果たしました。

2006年、ナポリターノはイタリア共和国大統領に就任しました。彼はイタリア共産党出身者として初めての大統領であり、その就任はイタリアの政治史に大きな転換をもたらしました。2013年には、前例のない大統領再選を果たしました。これは、イタリア総選挙後の政治的混乱の中で、ナポリターノへの国民の期待の高さが反映された結果でした。しかし、高齢であった彼は当初再選を固辞しましたが、議会各派からの要請を受け、渋々ながら再選に同意しました。2期目の任期途中で辞任するまで、約9年間という歴代最長の大統領在任期間を記録しました。

ナポリターノは、大統領としての職務に尽力する一方、歴史問題についても積極的に発言しました。特に、第二次世界大戦中にユーゴスラビアで行われたイタリア人住民に対する虐殺問題については、クロアチア政府から抗議を受けるほどの強い発言を行いました。

ナポリターノは、「ウンベルト王」や「赤い王子」といった異名でも知られています。前者は、イタリア王ウンベルト2世に似た容姿と慎重な態度から、後者は共産党出身であることから付けられたものです。

彼の政治理念は、イタリア共産党という枠組みを超えて、左翼民主主義、そして欧州統合へと広がっていきました。アルティエロ・スピネッリという欧州連合の父の一人とも言われる人物との盟友関係は、彼の政治思想に大きな影響を与えたとされています。スピネッリの評伝を書くなど、深い友情と敬意を払いながら、欧州統合という理想を共有しました。

エリック・ホブズボームとの共著『イタリア共産党との対話』は、彼の思想と経歴を知る上で貴重な資料となっています。この著作を通して、彼の政治的立場や信念、そして時代背景がより深く理解できます。

2023年9月22日、ローマの病院で死去。98歳でした。彼の死は、イタリア国民に大きな悲しみをもたらしました。ナポリターノは、イタリア共和国の歴史に大きな足跡を残した政治家として、後世に語り継がれていくでしょう。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の政治家の物語であると同時に、20世紀から21世紀にかけてのイタリアの歴史そのものと言えるでしょう。彼の功績と複雑な人生は、これからも多くの研究者や歴史家によって分析され、評価されていくことでしょう。

もう一度検索