ジョルジョ・ラ・ピーラ

ジョルジョ・ラ・ピーラ（Giorgio La Pira, 1904年1月9日 - 1977年11月5日）は、イタリアの著名な大学教授、政治家であり、フィレンツェ市長も務めた人物です。彼の生涯は、信仰、社会正義、平和への強いコミットメントによって彩られています。

生い立ちと信仰

ラ・ピーラはシチリア島ラグーザ県のポッツァッロで生まれ、幼少期を過ごしました。1914年には、シラクーサの伯父の家に移り住み、1925年に敬虔なカトリック信者としてドミニコ会第3会員となりました。1926年にはフィレンツェ大学法学部を卒業し、同大学でローマ法学の教鞭を執るようになります。フィレンツェは、その後の彼の生活と活動の中心地となりました。

1928年、ラ・ピーラはカトリック信徒団体『王たるキリストの在俗布教会』を創立し、清貧、従順、貞潔の誓いを立てました。結婚を望む親族からの勧めを断り、「神との貞潔を破るなら死んだ方がましだ」と述べるほど、信仰に対する彼の献身は非常に深いものでした。

社会奉仕とファシズムへの抵抗

1934年、ラ・ピーラは友人と共に、浮浪者や貧困に苦しむ人々への奉仕活動を始めました。『聖ブローコロの共同体』と名付けられたこの集会は、単なる慈善活動ではなく、キリスト教の精神に基づいた活動を展開しました。1939年には、カトリック系雑誌『ヴィータ・クリスティアーナ（キリスト教生活）』の付属本として『プリンチーピ』を発行し、台頭するファシズムを批判しました。

この批判が原因で1940年に『プリンチーピ』は廃刊となり、1943年には調査を受けることとなり、ラ・ピーラはローマに逃亡しました。しかし、彼は社会的に疎外された市民を見捨てることなく、支援活動を続けました。ファシズム政権崩壊後、フィレンツェに戻った彼は、1945年に『政治の要点』を出版し、ルソー、ヘーゲル、マルクスの世界観を信仰の視点から分析しました。

政治活動とフィレンツェ市長

1946年、ラ・ピーラは憲法制定議会委員に選出され、1948年にはアルチーデ・デ・ガスペリ内閣で労働省次官に就任し、本格的な政治活動を開始しました。しかし、雇用問題に対する政府の政策に異議を唱え、労働省次官を辞任します。

1951年、ラ・ピーラはフィレンツェ市長に当選し、戦争被災者や貧困層を救済するための政策を積極的に推進しました。その間、彼は自身が支援する観想修道院に祈りを依頼する文通を始めました。

1953年にはピニオーネ事件が発生し、エンリコ・マッケイの協力を得て、不当に解雇された労働者の救済に尽力しました。彼の社会活動は教会からの冷遇を受けることもありましたが、彼は信念を曲げることはありませんでした。

平和運動

ラ・ピーラは平和への情熱にも溢れており、1954年のジュネーブ赤十字国際会議で核兵器廃絶を訴えました。1955年から1956年にかけては、世界各国の首長を招き、都市を破壊から守るよう呼びかけました。エジプトのナセル大統領など、アラブ諸国の首長との会見も実現させました。1957年にはモロッコ、1959年にはモスクワを訪問し、平和への協力を呼びかけました。また、1964年に勃発したベトナム戦争の終結をホー・チ・ミンに訴え、1975年に終戦を迎えるまで、その努力は続けられました。その後も、東ヨーロッパ、中東、南アメリカ諸国を訪問し、平和への対話を続けたほか、若者たちとの交流も積極的に行いました。

その後

1977年11月5日、ジョルジョ・ラ・ピーラは亡くなりました。1986年には、フィレンツェ大司教シルヴァーノ・ピオヴァレッリによって列福調査が開始されました。彼の生涯は、信仰と社会正義を両立させ、世界平和のために尽力した模範として、多くの人々に影響を与え続けています。

出典：『20世紀の聖者』 アンジェリーナ・ヴォルペ著　ドン・ボスコ社　2010年

関連項目：冷戦

もう一度検索