ジョンベネ殺害事件

ジョンベネ殺害事件：未解決の謎

1996年12月26日、アメリカ・コロラド州ボルダーで、当時6歳の美少女、ジョンベネ・パトリシア・ラムジーが自宅で殺害されるという痛ましい事件が発生しました。この事件は、世界中のメディアで大きく報道され、未だに多くの謎が残る未解決事件として知られています。本稿では、事件の詳細、捜査の経緯、そして様々な説について詳しく解説します。

ジョンベネとその家族

ジョンベネ・パトリシア・ラムジーは、1990年8月6日にジョージア州アトランタで生まれました。父は実業家のジョン・ベネット・ラムジー、母はパトリシア・"パッツィ"・ラムジーです。3歳年上の兄、バークがいます。ジョンベネの名前は、父親のファーストネームとミドルネームを組み合わせたもので、母親の名前がミドルネームに使われました。彼女はコロラド州ボルダーの幼稚園に通っていました。

父親のジョンは、アクセス・グラフィックス社の社長を務める実業家でした。1991年に家族でボルダーに引っ越しました。母親のパッツィは、ジョンベネを数々の美少女コンテストに出場させ、多くの優勝経験があります。ジョンベネのコンテストでの活躍と、パッツィの熱心な「コンテスト・マザー」ぶりは、事件後、メディアで大きく取り上げられました。パッツィは2006年に卵巣癌で亡くなり、娘の隣に埋葬されました。

事件の経緯

事件発生まで

事件の3日前、ラムジー家から緊急通報がありましたが、これは酔っ払ったパーティー客による間違い電話だったとされています。12月25日、ラムジー家は友人の家でのクリスマスパーティーに出席し、ジョンベネはプレゼントに自転車をもらいました。その後、一家は帰宅し、ジョンベネは就寝しました。

ジョンベネが夜中に階下に降りて、夜食のパイナップルを巡って兄と喧嘩したという説があります。実際、検死では彼女の胃の中から果物が発見されています。

身代金要求書

事件の翌朝、自宅で身代金要求の手紙が発見されました。パッツィが午前5時半ごろ、階段に手書きの身代金請求書を発見し、娘が誘拐されたことに気づいたと供述しています。手紙には118,000ドルが要求されていました。この金額は、父親のジョンの前年のクリスマスボーナスとほぼ同額であり、犯人はその情報を知っていた可能性が指摘されました。

身代金要求書は非常に長く、FBIはこのようなメモが犯行現場で書かれる可能性は低いと指摘しました。手紙にはパッツィとそれを扱った警察以外の指紋がなく、感嘆符や頭文字が使われていることも異例でした。後に練習用の原稿も自宅から見つかっており、ラムジー家のペンと法務用紙が使われていました。コロラド州捜査局の報告書では、「身代金要求書の作者はパトリシア・ラムジー」としていますが、決定的な結論には至っていません。

通報と捜索

身代金要求書には警察に連絡しないようにとの指示がありましたが、パッツィは午前5時52分に警察に通報しました。警察は家の中を捜索しましたが、侵入の痕跡は見つかりませんでした。しかし、いくつかの窓とドアに鍵がかかっていなかったこと、地下室の窓が以前に壊れたままだったことが判明しました。当初、警察は誘拐事件として捜査を進めましたが、誘拐犯からの連絡は一切ありませんでした。

遺体の発見

午後1時、父親のジョンが地下室でジョンベネの遺体を発見しました。彼女は口をダクトテープで塞がれ、手首と首にナイロンコードが巻き付けられ、胴体は毛布で覆われていました。ジョンは娘の遺体を抱き上げ、ダクトテープを剥がし、紐を緩めました。これにより、現場はさらに異物混入が起こり、科学捜査のための重要な証拠が損なわれました。

検死

検死の結果、ジョンベネの死因は「頸部絞扼による窒息、関連要因として頭蓋大脳の外傷」とされました。頭蓋骨骨折、脳挫傷、くも膜下出血の所見があり、外陰部には膣粘膜の擦過傷と血管のうっ血が見られました。首に巻かれたナイロンコードは、絵筆の柄を折ったものが取り付けられた絞首具でした。胃からはパイナップルのような果物が発見され、死の数時間前に食べていたと考えられました。

捜査の進展

初動捜査の誤り

初動捜査の誤りにより、事件解決は極めて困難になりました。証拠の紛失や汚染、経験豊富な捜査員の不足、ラムジー夫妻と共有した証拠、両親の事情聴取の遅れなどが挙げられます。当初、警察の疑惑の目は両親に向けられていましたが、1997年10月には参考人が1600人以上に上りました。

ラムジー夫妻起訴への大陪審

1999年、大陪審はラムジー夫妻を起訴する起訴状を発行しましたが、検察官は証拠不十分として起訴を見送りました。その後、2002年に大陪審の起訴の時効が成立しました。

科学捜査の進展

2003年、ジョンベネの下着から見つかった混合血液サンプルからDNAプロファイルを確立することができました。そのDNAは未知の男性に属し、ラムジー夫妻のDNAは除外されました。2008年、ボルダー地方検事局は、新たに開発したDNAサンプリングと検査技術の結果として、ラムジー家の人々を事件の容疑者から除外することを発表しました。

2010年、ボルダー警察は未解決事件を再捜査しましたが、新たな情報は得られませんでした。2016年には、ジョンベネの服から採取された未知のDNAが「調査の焦点」であるべきだと主張されました。

関係者・専門家の意見

検察庁の主任捜査官であったジェームス・コラーは、ジョンベネの遺体から複数のDNAサンプルが発見されたことを述べています。元FBIプロファイラーのキャンディス・デロンは、複数の場所で同一に表示されたDNAは犯人のものであると信じています。一方、法医学病理学者のマイケル・バデンは、微量のDNAは様々な手段で付着することがあり、殺人を示す法医学的証拠はないと述べています。

犯行に関する説

家族説

当初、警察は両親であるジョンとパッツィを疑っていました。しかし、夫妻は一貫して無実を主張しました。大陪審は両親を起訴するように結論付けましたが、検察官は証拠不十分として起訴を見送りました。2008年、ラムジー家の人々は事件の容疑者から除外されました。

また、ジョンベネの兄バークが事件に関与したとする説も存在します。2016年のCBSの番組では、バークが夜食のパイナップルを盗まれたことに激怒してジョンベネを殺害したという結論が示されましたが、バーク側は名誉毀損訴訟を起こしました。

侵入者説

警察と検察は、ジョンベネの遺体が発見された地下の部屋に残されたブーツの跡から、侵入者の可能性も捜査しました。隣人や地元記者、家政婦などが容疑者として挙げられました。2003年、判事は「夫妻が子供を殺害したという証拠は事実上存在しないが、侵入者が家に入り娘を殺害したという証拠は豊富に存在する」と述べました。

また、作家のスティーブン・シングラーは、ジョンベネが児童ポルノ製作者や児童ページェントの現場に関わる小児性愛者の関心を集めた可能性を指摘しています。

虚偽の自白

2006年、ジョン・マーク・カーが自分がジョンベネを薬物漬けにして性的暴行を加え、誤って殺してしまったと主張しましたが、後に証拠不十分で釈放されました。

名誉毀損訴訟

ラムジー夫妻とその家族は、事件に関する報道や発言に対して、多数の名誉毀損訴訟を起こしました。これらの訴訟は、メディア、作家、専門家などを相手に行われ、多くの場合、和解や棄却で決着しました。これらの訴訟は、事件の真相解明をさらに複雑にする要因となりました。

結論

ジョンベネ殺害事件は、発生から20年以上が経過した今も、未解決のままです。家族、侵入者、またはその他、様々な説が提唱され、捜査も続けられていますが、未だ真相は解明されていません。この事件は、メディアの過熱報道、初動捜査の誤り、そして複雑な人間関係が絡み合い、真相解明を困難にしている典型的な例と言えるでしょう。

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