ジョン・ウィリアム・フェントン

ジョン・ウィリアム・フェントンの生涯

ジョン・ウィリアム・フェントン（1831年3月12日生まれ）は、アイルランドのコーク県キンセールにて、イギリス軍の宿舎で産誕しました。彼の出自はスコットランド系であり、彼自身はアイルランド人ではありません。13歳という若さでイギリス陸軍に加わり、少年鼓手兵としてのキャリアをスタートさせました。彼の軍歴には、インドやジブラルタル、マルタ、ケープ植民地での長い経験が含まれています。

1864年には最初の妻アニー・マリアと結婚した後、軍楽隊の指揮官に就任。1868年、彼は横浜に到着し、その後日本での音楽教育に携わります。最初の吹奏楽団を指導することが彼の主要な業績の一つとなり、彼の教材には西洋音楽理論が含まれ、日本における西洋音楽の普及に大きな影響を与えました。

彼の指導のもと、薩摩藩の青年たちによって日本最初の吹奏楽の練習が始まりました。楽器が届くまでの間、彼は信号ラッパや鼓隊の練習を行い、1870年には楽器が整い、本格的な演奏が可能となります。この時、フェントンは日本で初めて西洋音楽理論を体系的に教えた指導者とされています。

1871年、彼の妻が亡くなるという悲劇が彼を襲いますが、その後も日本の音楽教育に尽力し、1872年にはアメリカ人女性ジェーン・ピルキントンと再婚しました。彼はさまざまな教育機関で音楽教師として活躍し、1877年まで日本に留まりました。その後アメリカに移住し、カリフォルニア州で生涯を閉じました。

『君が代』との関わり

フェントンは日本の国歌『君が代』の初版を作曲したことで特に有名です。1869年、エディンバラ公アルフレッドが来日する際、日本側の関係者に国歌の吹奏を説明しましたが、日本にはその概念がありませんでした。1870年、薩摩藩の関係者がフェントンに『君が代』の歌詞を渡し、フェントンはこれをもとに作曲を行いました。

『君が代』の旋律は、当時日本に存在した鼓笛隊でも演奏できるように作られ、フェントンの作曲にはアイルランド風の要素が感じられます。『君が代』は1870年に初めて演奏され、彼の作曲によって日本の音楽界に新たな風をもたらしました。

しかし、フェントンの作った『君が代』は音節の一致が難しく、1877年に他の音楽家によって雅楽風に改訂される動きが見られました。最終的には、1880年に現行の『君が代』が制定され、フェントンの作品は公式な国歌としてはとらえられなくなったのです。

栄誉

1989年にはフェントンを称える碑が日本の妙香寺に設立され、ここが「日本吹奏楽発祥の地」として認知されています。その後もこの地で演奏会が数多く開催され、彼の遺産は今なお続いています。彼の人生と業績は、日本における音楽教育や文化交流の重要な一環として、多くの人々に評価されています。

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