ジョン・エントウィッスル

ジョン・エントウィッスル：伝説のベーシストの生涯と音楽

ジョン・エントウィッスル（John Entwistle、1944年10月9日 - 2002年6月27日）は、イングランド出身のロックミュージシャンであり、ザ・フーのベーシスト兼ソングライターとして世界的に知られています。彼の革新的なベースプレイは、「リード・ベース」とも称され、ロック史における最高のベーシストの一人として高く評価されています。

生い立ちと音楽との出会い

1944年、ロンドンのチズウィックで生まれたエントウィッスルは、幼少期から音楽に親しんで育ちました。父親からトランペット、母親からピアノの手ほどきを受け、7歳にして楽譜を読めるようになったといいます。11歳で少年楽隊に入り、フレンチホルンを演奏したことが、初めて人前で演奏した経験となりました。

12歳の時、アクトン公立中学校でピート・タウンゼントと出会い、音楽的な交流を深めます。14歳になると、デュアン・エディの音楽に触発され、ロックンロールに興味を持つようになりました。当初はギターを演奏していましたが、次第にベースギターに魅了され、自宅のダイニングテーブルを改造して自作のベースを作り上げました。

1959年、学友とバンド「コンフェデレイツ（The Confederates）」を結成し、タウンゼントを迎え入れてデキシーやトラッド・ジャズを演奏しました。コンフェデレイツは短命に終わりましたが、その後もタウンゼントとは「アリストクラッツ（The Aristocrats）」や「スコーピオンズ（The Scorpions）」といったバンドで共に演奏するなど、親交を続けました。

ザ・フーへの加入と革新的なベースプレイ

アクトン公立中学校卒業後、エントウィッスルは税務署員として働く傍ら、音楽活動を継続していました。1961年の夏、ロジャー・ダルトリーに誘われ、彼のバンド「ディトゥアーズ（The Detours）」に加入。1962年にはタウンゼントも加入し、ザ・フーの原型が形成されていきました。1964年、バンドはザ・フー（The Who）と改名し、キース・ムーンをドラマーに迎え、メジャーデビューを果たしました。

ザ・フーにおいて、エントウィッスルは他のメンバーがステージを縦横無尽に動き回るのとは対照的に、冷静沈着にベースを弾き続けるスタイルを確立しました。彼のベースは、リード楽器のようにメロディアスでありながら、バンド全体のサウンドを支える強靭な土台としての役割も果たしました。スタジオでは、ベースギターに加え、トランペットやフレンチホルンなど様々な金管楽器を演奏し、楽曲に多彩な音色を加えました。

ソロ活動と晩年

エントウィッスルは、ザ・フーのメンバーとして活動する傍ら、ソロアーティストとしても才能を発揮しました。1971年に1stソロアルバム『衝撃!! (Smash Your Head Against the Wall)』をリリースし、その後も数々のソロアルバムを発表しました。また、自身のバンドを結成し、ライブ活動も精力的に行いました。

しかし、1983年にザ・フーが一時解散した後、音楽活動からは徐々に遠ざかり、経済的な苦境に陥ることもありました。1987年には楽器フェアのプロモーションで初来日を果たし、その後も何度か来日しています。

2002年6月27日、ザ・フーの全米ツアー開始を翌日に控えたラスベガスのホテルで、エントウィッスルは心臓発作により死去しました。享年57歳。彼の突然の死は、音楽界に大きな衝撃を与えました。

音楽スタイルと評価

エントウィッスルのベースプレイは、アタックの強いサウンドと速いフィンガリングが特徴で、「サンダーフィンガーズ（Thunderfingers）」というニックネームで呼ばれました。彼の演奏は、ギターの代わりにオブリガートを奏でるなど、革新的で独特なものでした。ザ・フーの楽曲「マイ・ジェネレーション」のベースソロは、ギターソロと間違われるほどでした。

彼はロック史上最高のベーシストの一人として広く認められており、ローリング・ストーン誌の「最も偉大なベーシスト」で第1位に選ばれています。彼の音楽は、ゲディ・リー、レミー・キルミスター、ノエル・ギャラガーなど、数多くのミュージシャンに影響を与えました。

ジョン・エントウィッスルは、その革新的なベースプレイと音楽への情熱によって、ロック史に永遠に名を残すことでしょう。

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