ジョン・ガーランド (銃器設計者)

ジョン・キャンティアス・ガーランド：M1ガーランド小銃の父

ジョン・キャンティアス・ガーランド（1888年1月1日 - 1974年2月16日）は、20世紀を代表する銃器設計者の一人として知られています。彼が設計したM1ガーランド小銃は、世界で初めて主力歩兵銃として成功を収めた半自動小銃であり、その革新的な設計思想は、後の銃器開発に大きな影響を与えました。

生い立ちと機械工としての出発

ガーランドは、カナダのケベック州サン＝レミでフランス系カナダ人の家庭に生まれました。幼少期にアメリカ合衆国コネチカット州に移住し、11歳から織物工場で機械工として働き始めます。そこで彼は機械技術の基礎を学び、後に銃器設計者としての才能を開花させるための土台を築きました。その後、ロードアイランド州の機材工場へ移り、さらに経験を積みました。

銃器設計への情熱

機械工として働く傍ら、ガーランドは趣味として標的射撃に熱中し、それがきっかけで銃器の設計に興味を持つようになりました。1917年、アメリカ陸軍が軽機関銃の設計案を募集した際、彼は自らの設計案を提出し、見事採用されます。国立標準局の職員として、彼は自らの設計案に基づいた軽機関銃の開発に取り組みましたが、第一次世界大戦の終結により、その採用は見送られました。しかし、彼の才能を高く評価した政府は、スプリングフィールド造兵廠付技師という新たな地位を与え、引き続き銃器設計に当たらせることとしました。

M1ガーランド小銃の開発

スプリングフィールド造兵廠において、ガーランドに課せられた使命は、半自動歩兵銃およびカービン銃の開発でした。彼は数々の試行錯誤を繰り返し、陸軍からの要求を盛り込みながら、15年もの歳月をかけて開発に取り組みました。そして1934年、ついにM1ガーランド小銃の特許を取得し、1936年には量産が開始されました。

M1ガーランド小銃は、第二次世界大戦や朝鮮戦争など、数々の戦場でアメリカ軍兵士の手に渡り、その信頼性と性能の高さで評価されました。その高い命中精度と連射性能は、歩兵の戦闘能力を飛躍的に向上させ、戦局に大きな影響を与えたと言われています。

ブルパップ方式小銃の試作と晩年

1940年代後半から1950年代初頭にかけて、ガーランドはブルパップ方式小銃の設計・試作にも取り組みました。この小銃は、M1ガーランド小銃と同じ弾薬を使用しながらも、構造は大きく異なり、セレクティブ・ファイア機能も備えていました。しかし、M1小銃の退役が決定し、ブルパップ方式試作銃T31も未完成であったため、プロジェクトは放棄されました。試作銃は現在、スプリングフィールド造兵廠博物館に所蔵されています。

ガーランドは、M1小銃設計を始めとするスプリングフィールド造兵廠勤務中の功績により、1941年に功績章、1944年にはメリット・メダルを授与されました。彼は自らの設計について、使用料を一切求めず、その貢献を讃えようとしたアメリカ合衆国議会による10万ドルの支払い法案も、通過には至りませんでした。1953年に技師を引退した後も相談役として務めました。

ガーランドは、核兵器の時代においても歩兵銃の重要性は変わらないと考えており、「戦争に根本的な変化がない限り、ライフルが不要になることはない」と語っていました。1974年2月16日、マサチューセッツ州スプリングフィールドの病院で亡くなりました。

家族

1930年、ガーランドは未亡人ネリー・ブルース・シェパードと結婚し、一男一女をもうけました。また、シェパードの連れ子である二人の娘もいました。

名前について

ガーランドの名前の発音については議論があり、[ɡəˈrænd]と[ˈɡærənd]のどちらが正しいかという議論がありますが、彼の親族や友人であるジュリアン・ハッチャーは、後者がより近いと主張しています。

ジョン・キャンティアス・ガーランドは、その革新的な設計思想と銃器開発への情熱によって、20世紀の軍事史に名を刻んだ偉大な銃器設計者として、今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索