ジョン・グラッドストン (初代准男爵)

サー・ジョン・グラッドストン：激動の時代を駆け抜けた政治家、貿易商、そして奴隷農場主

サー・ジョン・グラッドストン（Sir John Gladstone, 1st Baronet, 1764年12月11日 - 1851年12月7日）は、18世紀から19世紀にかけて活躍したイギリスの政治家、貿易商であり、奴隷農場主という複雑な側面を持つ人物です。彼は、後にイギリスの首相となるウィリアム・グラッドストンの父としても知られています。

生い立ちと初期のキャリア

1764年、ジョン・グラッドストンはスコットランドで、穀物商であるトマス・グラッドストンスの長男として生まれました。父の事業を手伝うことで初期の資本を築き、その後リヴァプールに移住。友人たちと穀物貿易の商会を設立し、事業を拡大しました。フランス革命戦争とナポレオン戦争の時代には、貿易はリスクの高い事業となりましたが、グラッドストンは成功を収めました。

貿易と奴隷制度

当初、東インド貿易に携わっていたグラッドストンは、後に西インド貿易にも進出。英領ギアナやジャマイカなどで広大な農地を所有し、サツマイモやコーヒーを栽培しました。当時、イギリス本国では奴隷貿易が禁止されていましたが、植民地では合法であり、グラッドストンは多くの黒人奴隷を酷使しました。1823年には、彼の所有する農場がギアナでの奴隷一揆の中心地となるなど、負の遺産も残しています。

政治家としての活動

リヴァプールの名士となったグラッドストンは、1818年から1827年まで庶民院議員を務めました。当初はホイッグ党に所属していましたが、後にトーリー党に移りました。しかし、トーリー党内では自由主義的な立場を取り、カトリック解放や商業規制の撤廃を支持しました。政治家としては特筆すべき実績は残せませんでしたが、その後のイギリス政治に大きな影響を与える息子、ウィリアムを育て上げました。

グラッドストン家の発展

1835年には、姓を「Gladstones」から「Gladstone」に改名。1846年には准男爵の称号を授与されました。二度の結婚を経て、多くの子を儲け、その四男ウィリアムが後に首相となるなど、グラッドストン家はイギリス社会で重要な地位を占めることになります。

家族と教育

最初の妻ジェーン・ホールを早くに亡くし、その後アン・マッケンジー・ロバートソンと再婚。彼らの間には、後の第2代准男爵となるトマス、政治家となったウィリアムなど、多くの子が生まれました。グラッドストンは、子供たちに自由な討論を奨励し、合理主義と経験主義を重視する教育を施しました。特に、議論好きであった四男ウィリアムは、この教育方針の影響を強く受けたと言われています。

まとめ

サー・ジョン・グラッドストンは、貿易によって富を築き、政治家としても活動した一方で、奴隷制度に関与したという負の側面も持ち合わせています。しかし、彼が築いた富と、彼が子供たちに与えた教育は、後のイギリス社会に大きな影響を与えました。特に、首相となったウィリアム・グラッドストンの存在は、彼の遺産を語る上で欠かせません。激動の時代を生き抜き、社会に大きな足跡を残したサー・ジョン・グラッドストンの生涯は、多角的な視点から考察されるべきでしょう。

参考文献

尾鍋輝彦『最高の議会人 グラッドストン』清水書院〈清水新書016〉、1984年。ISBN 978-4389440169。
新版『最高の議会人　グラッドストン』清水書院「新・人と歴史29」、2018年(平成30年)。ISBN 978-4389441296.
神川信彦『グラッドストン　政治における使命感』君塚直隆 解説、吉田書店、2011年。ISBN 978-4905497028。
[永井柳太郎]]『グラッドストン』実業之日本社、1929年。[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1187734。

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