ジョン・シルヴァー

ジョン・シルヴァー：ジェネシス黎明期を支えたドラマー

1950年にイングランドで生まれたジョン・シルヴァーは、プログレッシブ・ロックの分野で大きな影響力を持つバンド、ジェネシスにおいて、その黎明期にあたる時期にドラマーとして活動した音楽家です。彼はジェネシス史上2番目のドラマーにあたります。

ジェネシスへの参加とその役割

シルヴァーがジェネシスに加わったのは1968年の夏のことでした。当時の初代ドラマー、クリス・スチュワートがバンドを離れることになり、その後任として彼の加入が決定しました。この時期のジェネシスは、キング・クリムゾンやイエスといった同時代のバンドと共に、プログレッシブ・ロックという新たな音楽ジャンルを切り拓こうとしており、まさにバンドのサウンドが形成されつつある重要な段階にありました。ジョン・シルヴァーは、この過渡期において約1年間にわたりバンドのリズムセクションを担いました。

彼のジェネシス在籍中に特筆すべきは、バンドにとって初めてのスタジオ・アルバムとなる『創世記』（原題：From Genesis to Revelation、1969年発表）のレコーディングに参加したことです。このアルバムは初期のジェネシスのサウンドを知る上で欠かせない作品であり、シルヴァーのドラミングがそこに収められています。また、後年にリリースされたバンドの初期音源集『アーカイヴ 1967-1975』にも、彼の演奏が収録されており、当時の彼のプレイを今日でも聴くことが可能です。

ジェネシスがまだ発展途上だった頃、彼らはリハーサル場所の確保にも苦労していましたが、オックスフォードにあったジョン・シルヴァーの実家が、そのためのスペースとしてしばしば利用されたというエピソードも残っています。これは、彼が単なるメンバーとしてだけでなく、初期ジェネシスにとって物理的な面でも支えとなっていたことを示唆しています。

バンドからの離脱、そしてその後の人生

ジョン・シルヴァーは、ジェネシスでの活動に終止符を打ち、1969年の8月にバンドを脱退しました。その理由は、アメリカ合衆国にあるコーネル大学へ進学し、学業に専念するためでした。彼の脱退を受けて、後任のドラマーとしてジョン・メイヒューがバンドに加入することになりました。

ジェネシスを離れた後も、音楽との全くの断絶というわけではありませんでした。特に、かつてバンドメイトであったギタリストのアンソニー・フィリップスとは関係が続いたようです。1973年には、アンソニー・フィリップス、マイク・ラザフォード、フィル・コリンズといった当時のジェネシスのメンバーたちが、ジョン・シルヴァーに敬意を表して「Silver Song」というタイトルの楽曲を制作しました。この曲はアンソニー・フィリップスのソロ作品に収録され、別バージョンも存在します。さらに、ジョン・シルヴァー自身も、1973年に録音されたアンソニー・フィリップスの楽曲「Fantomas Opening Theme」にプレイヤーとして参加しており、フィリップスのアルバム『アーカイブ・コレクション・ヴォリュームII』でその演奏を聴くことができます。

音楽活動とは別のキャリアとしては、1980年代にロンドンにあるテムズ・テレビジョンで一時的に勤務していた時期があったと伝えられています。

現在のジョン・シルヴァーは、妻のルーシー、そしてレオ、マックス、リビーという3人の子供たちと共に、静かにロンドンで暮らしているとされています。

ディスコグラフィ（ジェネシスでの参加作品）

* 『創世記』 - From Genesis to Revelation (1969年)

ジョン・シルヴァーは、ジェネシスの歴史の中では短期間の在籍ではありましたが、バンドの最初のアルバムに貢献し、その初期のサウンド形成に関わった人物です。彼の存在は、プログレッシブ・ロックへと向かうジェネシスの歩みにおける、一つの確かな足跡として記録されています。

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