ジョン・スタンリー

チャールズ・ジョン・スタンリー

チャールズ・ジョン・スタンリー（Charles John Stanley, 1712年1月17日 - 1786年5月19日）は、18世紀イギリスを代表する作曲家および卓越したオルガン奏者の一人です。彼は幼少期に視力を失うという大きなハンディキャップを背負いましたが、音楽に対する深い情熱と才能をもって困難を乗り越え、輝かしいキャリアを築きました。

彼の音楽教育は、同時代の著名な作曲家であったモーリス・グリーンに師事したことから始まりました。ロンドンを中心に精力的な演奏活動を展開し、オルガン奏者としての技術は高く評価されました。彼の演奏会は当時の音楽愛好家たちを魅了し、その名声は確固たるものとなっていきました。

スタンリーは、高名な作曲家ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルと親交が深く、深い友情で結ばれていました。ヘンデルの没後、スタンリーは彼の音楽的遺産を受け継ぐ上で重要な役割を果たします。ヘンデルがロンドンで主宰していたオラトリオ公演は、彼の死後も聴衆に待ち望まれていました。スタンリーは、まずジョン・クリストファー・スミスと協力し、その後はトーマス・リンリーと共に、これらのオラトリオ公演の継続に尽力しました。これにより、ヘンデルの偉大な作品群がその後もロンドンで演奏され続けることになったのです。この活動は、当時のイギリス音楽界において、ヘンデルの業績を後世に伝える上で極めて意義深いものでした。

公的な音楽家としての地位も確立しました。1779年には、ウィリアム・ボイスの後任として、名誉ある「国王の音楽師範（Master of the King's Musick）」に任命されました。これは、王室の音楽行事を司る重要な役職であり、彼の音楽家としての功績と地位が国によって認められたことを示すものです。

スタンリーの創作活動は多岐にわたります。オペラ『テラミンタ』や、劇的な表現を特徴とするカンタータ『ヘラクレスの選択』など、声楽作品を手がけました。また、詩人ジョン・ホーキンズがテクストを提供した12のカンタータは、当時のイギリス声楽作品における重要な例として挙げられます。さらに、『エフタ』や『The Fall of Egypt and Zimri』といったオラトリオも作曲しており、ヘンデルの後継者としてこのジャンルにも貢献しています。

器楽作品の中では、特に『トランペットヴォランタリー』が有名です。この曲は、元々オルガンのために作曲されたもので、オルガンに搭載されている、トランペットのような華やかで力強い音色を出す「トランペットストップ」という装置を効果的に活用していることからその名が付けられました。この作品は、オルガンの持つ多様な音色と表現力を巧みに引き出した好例と言えます。現代においては、この曲はオルガン原曲だけでなく、トランペット独奏と室内楽団のために編曲されたバージョンも広く演奏されており、彼の代表作として親しまれています。

チャールズ・ジョン・スタンリーは、視覚を失いながらも音楽への情熱を燃やし続け、作曲家、オルガン奏者、そして音楽興行主として18世紀のイギリス音楽史に確かな足跡を残しました。ヘンデルとの深い繋がりを持ち、その遺業を継承すると同時に、自身の独創的な作品を生み出した彼の生涯は、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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