ジョン・スチュワート・ベル

ジョン・スチュアート・ベル（John Stewart Bell, 1928年6月28日 - 1990年10月1日）は、北アイルランドのベルファストで生まれ、量子物理学に多大な貢献をした物理学者です。

生涯と業績

ベルは1948年にクイーンズ大学を実験物理学専攻で卒業後、バーミンガム大学で原子核物理学と場の量子論で博士号を取得しました。1960年からはCERN（欧州原子核研究機構）に勤務し、亡くなるまでその地で研究を続けました。1972年には王立協会のフェローに選出されています。

彼の最も重要な業績は、1964年に発表された論文「On the Einstein-Podolsky-Rosen Paradox（EPRパラドックスについて）」で示された、ベルの不等式です。この不等式は、局所性と実在性という二つの基本的な仮定を満たすあらゆる物理理論において成立するはずのものでした。しかし、ベルは自身の論文で、量子力学においてはベルの不等式が成立しないことを数学的に証明しました。これは、局所実在性という古典的な物理学の概念と、量子力学が根本的に矛盾することを示唆するものであり、物理学界のみならず哲学界にも大きな衝撃を与えました。

その後、フランスの物理学者アラン・アスペらによる実験によって、実際にベルの不等式が成り立たないことが検証され、自然界が局所実在性に従わないことが確認されました。この結果は、量子力学の解釈において重要な進展をもたらしました。

ベル自身は、量子力学の一般的な解釈であるコペンハーゲン解釈よりも、ボーム解釈や自発的収縮理論といった、より客観的な解釈を支持していました。

1990年、ベルは脳内出血のためベルファストで亡くなりました。彼の遺体は火葬され、遺灰はジュネーブのサンジョルジュ墓地の納骨堂に埋葬されました。

受賞歴

1988年 ポール・ディラック賞
1989年 ハイネマン賞数理物理学部門

関連事項

ベルの不等式
EPRパラドックス

ベルの研究は、量子力学の基礎を理解する上で欠かせないものであり、彼の業績は現代物理学において非常に重要な位置を占めています。

もう一度検索