ジョン・ポラニー

ジョン・チャールズ・ポラニー

ジョン・チャールズ・ポラニー（John Charles Polanyi）は、1929年1月23日に生まれた、著名なハンガリー系ユダヤ人のカナダ人化学者です。彼は、カナダ勲章受勲者、カナダ女王枢密院委員、カナダ王立協会会員、王立協会会員といった数々の栄誉と肩書を持つ人物です。博士号（Ph.D.）および理学博士（D.Sc.）を取得しています。

生い立ちと教育

ハンガリー名はポラーニ・ヤーノシュ（Polányi János）といいます。彼は、ユダヤ系ハンガリー人の化学者ミハーイ・ポラーニ（後にマイケル・ポランニーとして知られる）と、ドイツ系ユダヤ人のマグダ・エリザベト・ケミニー・ポラーニ夫妻の子として、ドイツのベルリンで生を受けました。経済学者であるカーロイ・ポラーニ（カール・ポランニー）は彼の伯父にあたります。

1933年、ナチス政権の台頭による危険を察知したポラニー一家は、ドイツを離れてイングランドのマンチェスターへ移住しました。ポラニーはマンチェスター初等中学校で学び、その後、父が教鞭を執っていたマンチェスター大学に進学しました。同大学で化学を専攻し、1952年に博士号を取得しています。

カナダでのキャリア

博士号取得後の1952年、ポラニーはカナダへと渡りました。当初はカナダ国立研究所に勤務しましたが、1956年にはトロント大学に移籍しました。トロント大学では研究と教育に従事し、1974年には教授に昇進しました。この時期から、マシー大学のシニアフェローも兼任しています。

研究業績とノーベル賞

ポラニーの最も重要な研究は、化学反応の素過程に関する動力学的研究です。彼は、反応によって放出される光、特に赤外線を観測する「赤外線化学発光」という画期的な技術を開発し、発展させました。この技術を用いることで、分子が反応する瞬間の詳細な挙動や、反応生成物が持つエネルギーの状態などを詳細に解析することが可能になりました。

赤外線化学発光法の進歩は、化学反応速度論に対する理解を飛躍的に深めました。分子レベルでの反応メカニズムを明らかにする彼の研究は、化学反応の設計や制御といった応用面にも大きな影響を与えました。

これらの卓越した功績が認められ、ポラニーは1986年にノーベル化学賞を受賞しました。この受賞は、化学反応の素過程の動力学的研究への貢献によるものであり、ダドリー・ハーシュバック、李遠哲との共同受賞でした。

受賞と栄誉

ノーベル賞以外にも、ポラニーは数多くの権威ある賞を受賞しています。

1964年：センテナリー賞
1978年：レムセン賞
1982年：ウルフ賞化学部門
1989年：ロイヤル・メダル
1994年：ベーカリアン・メダル
2007年：ヘルツバーグメダル
* 2012年：ヘルムホルツ・メダル

また、彼は1979年にカナダ勲章を受章し、1992年7月1日からはカナダ女王枢密院の委員も務めています。平和活動にも関心を持ち、パグウォッシュ会議に参加した経験もあります。

ポラニーの名を冠した賞

ポラニーのノーベル化学賞受賞を記念し、オンタリオ州政府は「ジョン・チャールズ・ポラニー賞」を創設しました。この賞は、オンタリオ州に在住し、顕著な業績を挙げた研究者を表彰するもので、ノーベル賞と同様の分野区分があり、受賞者には2万ドルの賞金が贈られます。

さらに、2005年にはカナダ学術振興協会が、ユダヤ系カナダ人の優れた研究者や技術者を表彰するための「ジョン・C・ポラニー賞」を創設しました。これらの賞は、彼のカナダ科学界への貢献と、後進育成への期待を示すものです。

私生活

私生活では、2004年に肖像画家のブレンダ・ベリーと結婚しています。

ジョン・チャールズ・ポラニーは、その先駆的な研究と教育への情熱を通じて、カナダおよび世界の化学の発展に計り知れない貢献を果たした、現代を代表する科学者の一人です。

もう一度検索