ジョン・マッキー (作曲家)

ジョン・マッキー

1973年10月1日に生まれたジョン・マッキーは、現代アメリカを代表する作曲家の一人です。特に日本の吹奏楽界において、彼の作品は非常に高い知名度と人気を誇っています。

オハイオ州ニューフィラデルフィアで生を受け、ウェスターヴィルで育ったマッキーの家庭は両親が音楽家でしたが、彼自身は公式な楽器演奏の教育を受けることはありませんでした。しかし、祖父から楽譜の読み方やコンピューターを使った楽譜作成の基礎を教わったことをきっかけに、独学で音楽の世界に入り込みます。既存の枠にとらわれない実験的な学びの経験が、彼独自の音楽を生み出す原動力となりました。

クリーヴランド音楽大学でドナルド・アーブに師事して1995年に学士号を取得した後、ジュリアード音楽院でジョン・コリリアーノに学び、1997年には修士号を取得しました。彼は、楽器演奏の経験がない作曲家にも門戸を開くべきだと考え、作曲家への入学・卒業試験において必ずしも楽器演奏能力を求めない教育機関の方針を支持しています。「楽器を演奏する能力がなくても、作曲という創造的な行為を行う手段は明確に存在します」と、自身の経験に基づいた持論を展開しています。

作曲家としてのキャリアは、1995年から2005年まで過ごしたニューヨークで本格化しました。この時期には、デビット・パーソンズ、ロバート・バトル、アイガル・ペリーといった著名な舞踏家たちとの共同作業を積極的に行い、ダンス作品のための音楽を数多く手掛けています。その後、ロサンゼルス、オースティンを経て、2016年からはマサチューセッツ州ケンブリッジを拠点に活動しています。

日本には2007年3月、自身の作品『翡翠（かわせみ）』の世界初演が日本管楽合奏指揮者会議（JWECC）で行われた際に初めて訪れました。この来日以降、彼の作品は日本の吹奏楽ファンや演奏家の間で急速に浸透していきます。

特に2006年頃からは、全日本吹奏楽コンクールにおいて、彼の作品が自由曲として取り上げられる機会が飛躍的に増加しました。中でも『吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」』は、2015年に名取交響吹奏楽団がこの曲を演奏して全国大会金賞を受賞したことを機に、爆発的な人気を獲得しました。2017年には、同曲が吹奏楽コンクール支部大会での演奏曲ランキングで1位となるほど、多くのアマチュア吹奏楽団によって演奏されています。約30分にも及ぶこの大曲は、全楽章を通して演奏されることも多く、しばしばコンサートのメインプログラムとして演奏団体に選ばれています。

マッキーの代表的な吹奏楽作品としては、オーケストラ版から編曲され、ウォルター・ビーラー記念作曲賞やオストウォルド賞を受賞した『レッドライン・タンゴ』、『アスファルト・カクテル』、『オーロラの目覚め』（これもオストウォルド賞、ウィリアム・レヴェリ作曲コンテスト受賞作品）などがあります。これらの作品は、その斬新なサウンド、力強いリズム、鮮烈な響きで知られ、現代吹奏楽の重要なレパートリーとなっています。ソプラノ・サックスやトロンボーン、打楽器のための協奏曲など、独奏楽器と吹奏楽のための作品も手掛けています。2024年には『付喪神』を発表するなど、精力的な創作活動を続けています。

ジョン・マッキーの作品は、クラシック音楽の伝統に根ざしつつも、現代的な感覚とエネルギーに満ちており、特に吹奏楽という編成の可能性を大きく広げています。彼の楽曲は、演奏者にとっても聴衆にとっても刺激的で魅力的な体験を提供し続けています。

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