ジョン・ミルトン

ジョン・ミルトン：生涯と作品

ジョン・ミルトン (1608年12月9日 - 1674年11月8日～10日) は、イングランドを代表する詩人で、その生涯は激動の時代と深く結びついています。共和政支持者として、清教徒革命やオリバー・クロムウェルの活動に積極的に関与したミルトンは、詩人としての才能と政治思想家としての活動の両面で、後世に大きな影響を与えました。

ミルトンは、作曲家の父とサラ・ジェフリーの間に生まれました。ケンブリッジ大学クライストカレッジで学んだ彼は、学生時代から並外れた知性と才能を示しながらも、必ずしも周囲と良好な関係を築いていたわけではありませんでした。1629年に学士号、1632年に修士号を取得した後、詩作や戯曲執筆に没頭します。代表的な初期作品として、仮面劇『コマス』(1634年) が挙げられます。イタリアへの旅行(1638-1639年) は、彼の芸術的感性をさらに磨くことになります。

1640年代は、イングランド内戦と清教徒革命の時代でした。ミルトンはこの激動の時代を政治思想家として生き抜きます。1642年に結婚し、その後、教会改革論や言論の自由を主張した名著『アレオパジティカ』(1644年) を発表しました。この著作は、現代の表現の自由を議論する上でも重要な文献となっています。共和政政府のラテン語秘書として働き、チャールズ1世処刑(1649年)後も共和政を擁護し続けました。しかし、1652年には過労により失明するという大きな試練に見舞われます。

王政復古後、ミルトンは詩作に専念します。彼の晩年の仕事は、まさに傑作と言えるでしょう。1658年ごろから執筆を開始した叙事詩『失楽園』(Paradise Lost, 1667年)は、聖書の創世記を題材に、善悪の対立、自由意志、神の摂理といった壮大なテーマを描いた、不朽の名作として高く評価されています。この作品は、ダンテの『神曲』やアリオストの『狂えるオルランド』と並ぶルネサンス期の三大叙事詩の一つに数えられています。さらに、続編として『復楽園』(Paradise Regained, 1671年)と、ギリシャ悲劇を題材とした『闘士サムソン』(Samson Agonistes, 1671年)を発表しています。

ミルトンの作品は、詩だけでなく、散文による政治論文や宗教論も数多く残されています。これらの著作は、彼の政治的信念と宗教観を示すものであり、自由、正義、信仰といった普遍的なテーマを探求しています。『アレオパジティカ』以外にも、『離婚の教理と規律』『自由共和国建設論』など、様々なパンフレットや政治文書を通じて、彼は時代の転換期にあって鋭い批判精神と確固たる信念を示し続けました。

ミルトンは、失明後も創作活動を続け、1674年に亡くなりました。彼の作品は、英語文学史における重要な位置を占めるのみならず、人類の普遍的な問題への深い洞察を提供し続けています。その詩作は、比類なき表現力と洗練された技巧で知られ、今日でも世界中の読者から愛読されています。彼の影響は、ロマン主義詩人や20世紀の文学にも及んでおり、彼の思想と作品は、今後も現代社会に多大な影響を与え続けるでしょう。

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