ジョン・リンドリー (植物学者)
ジョン・リンドリー（John Lindley、1799年2月5日 - 1865年11月1日）は、19世紀のイギリスを代表する植物学者、園芸家、そして蘭研究家として知られています。
リンドリーは、ノーウィッチ近郊のカットンで、果樹園を営むジョージ・リンドリーの息子として生まれました。父親は園芸の知識は豊富でしたが、経営は上手くいきませんでした。幼少期から父親の仕事を手伝い、地元の野生植物に親しみました。大学進学や軍人への道も考えましたが、家庭の経済状況から断念し、1815年にロンドンの種子商に就職しました。この頃、植物学者のウィリアム・ジャクソン・フッカーと知り合い、彼の蔵書を閲覧する機会を得ました。その後、博物学者のジョゼフ・バンクスに紹介され、バンクスの植物園で助手として働くことになりました。
1819年、リンドリーは最初の著書として、フランスの植物学者ルイ・クロード・リシャールの著書「Analyse du fruit」の翻訳を出版しました。1920年には、自著である「Monographia Rosarum」を出版しました。この著書では、新種の植物を記述し、自ら図版も作成しました。1821年には、「Monographia Digitalium」と「Observations on Pomaceae」を出版し、植物学者としての地位を確立しました。
ロンドンのバンクスの家に住み込み、バラとジギタリスの研究に没頭しました。著書「A Botanical History of Roses」では、76種ものバラを紹介し、そのうち13種は新種でした。この本には、リンドリー自身が描いた19点の図版が添えられています。また、ロンドン園芸協会の事務局長でバラ愛好家のジョセフ・セイビンと知り合ったことも、リンドリーの研究活動に大きな影響を与えました。バンクスの死後、バンクスの友人である裕福な商人ウィリアム・キャトレーに雇われ、彼の植物園の新しい植物の記述と植物画の制作を依頼され、キャトレーの支援によって「Digitalia Monographia」を出版しました。リンドリーは、ランの種名に「カトレヤ（Cattleya）」と献名することで、キャトレーの好意に報いました。1820年には、21歳でロンドン・リンネ協会の会員に選出されました。
1821年から1826年にかけては、自ら描いた彩色図版を含むフォリオ版の「Collectanea botanica or Figures and botanic Illustrations of rare and curious exotic Plants」を出版しました。この中で取り上げられた植物の多くは、リンドリーが生涯にわたって魅せられていたランでした。1822年にはロンドン園芸協会の副事務局長となり、1829年にはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの植物学教授に就任し、1860年までその職を務めました。また、1831年からは王立研究所で植物学を教え、1830年代後半からはチェルシー薬草園でも教鞭をとりました。
リンドリーは1838年に西オーストラリアを探検したトーマス・ミッチェル隊のジェームズ・ドラモンドとジョージアナ・モロイが収集した植物を調査し、1839年に「Appendix to Edwards's Botanical Register」を発表しました。
専門的な研究書だけでなく、一般向けの著書も多く執筆し、園芸協会の「Botanical Register」の編集を長く担当しました。また、「園芸家年鑑（The Gardeners' Chronicle）」にも貢献しました。この「園芸家年鑑」は、1841年にジョセフ・パクストン、チャールズ・ディルク、ウィリアム・ブラドベリーとともに創刊し、リンドリーは初代編集長を務めました。
1845年秋にアイルランドでジャガイモ飢饉が発生すると、リンドリーは化学者のライアン・プレイフェアと共に、ジャガイモ疫病の原因究明のためにアイルランドに派遣されました。11月中旬に提出した報告書で被害の深刻さを訴えましたが、疫病の原因を「雨による腐食」と誤って結論づけました。今日では、ジャガイモ疫病の原因は疫病菌であることが明らかになっています。
1828年には王立協会の会員に選出され、1857年には王立協会のロイヤル・メダルを受賞しました。
リンドリーは生涯で数多くの著作を出版しました。以下は、その主なものです。
An Outline of the First Principles of Horticulture (1832)
An Outline of the Structure and Physiology of Plants (1832)
Nixus Plantarum (1833)
The Genera and Species of Orchidaceous Plants (1835)
A Natural System of Botany (1836)
The Fossil Flora of Great Britain (1831–1837) - ウィリアム・ハットンとの共著
Flora Medica (1838)
Theory of Horticulture (1840)
The Vegetable Kingdom (1846)
Folia Orchidacea (1852)
Descriptive Botany (1858)
Appendix to the first twenty-three volumes of Edwards's botanical register (1839)
Collectanea botanica (1821–1826) - リチャードとアーサー・テイラーとの共著
Edwards' botanical register (1829–1847) - ジェームズ・リッジウェイとの共著、Vol. 15-33
Einleitung in das natürliche System der Botanik (1833)
The genera and species of orchidaceous plants /by John Lindley. (1830–1840)
Medical and oeconomical botany /by John Lindley (1849)
Monographie du genre rosier, traduit de l'anglais de J. Lindley ...par M. de Pronville (1824) - オーギュスト・ド・プロンヴィルとの共著
Paxton's flower garden /by Professor Lindley and Sir Joseph Paxton (1853) - ジョセフ・パクストンとの共著
Sertum orchidaceum:a wreath of the most beautiful orchidaceous flowers /selected by John Lindley. (1838)
Ladies' Botany (1834–37)
Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Lindley, John" . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 16 (11th ed.). Cambridge University Press.
Boulger, George Simonds [in 英語] (1893). "Lindley, John" . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 33. London: Smith, Elder & Co. pp. 277–279.
Rines, George Edwin, ed. (1920). "Lindley, John". Encyclopedia Americana (英語).
"ジョン・リンドリーの関連資料一覧" (英語). イギリス国立公文書館. （英語）
John Lindley (1799-1865) - ナショナル・ポートレート・ギャラリー （英語）
* John Lindley - Find a Grave（英語）
生い立ちと初期のキャリア
リンドリーは、ノーウィッチ近郊のカットンで、果樹園を営むジョージ・リンドリーの息子として生まれました。父親は園芸の知識は豊富でしたが、経営は上手くいきませんでした。幼少期から父親の仕事を手伝い、地元の野生植物に親しみました。大学進学や軍人への道も考えましたが、家庭の経済状況から断念し、1815年にロンドンの種子商に就職しました。この頃、植物学者のウィリアム・ジャクソン・フッカーと知り合い、彼の蔵書を閲覧する機会を得ました。その後、博物学者のジョゼフ・バンクスに紹介され、バンクスの植物園で助手として働くことになりました。
植物学者としての活躍
1819年、リンドリーは最初の著書として、フランスの植物学者ルイ・クロード・リシャールの著書「Analyse du fruit」の翻訳を出版しました。1920年には、自著である「Monographia Rosarum」を出版しました。この著書では、新種の植物を記述し、自ら図版も作成しました。1821年には、「Monographia Digitalium」と「Observations on Pomaceae」を出版し、植物学者としての地位を確立しました。
ロンドンのバンクスの家に住み込み、バラとジギタリスの研究に没頭しました。著書「A Botanical History of Roses」では、76種ものバラを紹介し、そのうち13種は新種でした。この本には、リンドリー自身が描いた19点の図版が添えられています。また、ロンドン園芸協会の事務局長でバラ愛好家のジョセフ・セイビンと知り合ったことも、リンドリーの研究活動に大きな影響を与えました。バンクスの死後、バンクスの友人である裕福な商人ウィリアム・キャトレーに雇われ、彼の植物園の新しい植物の記述と植物画の制作を依頼され、キャトレーの支援によって「Digitalia Monographia」を出版しました。リンドリーは、ランの種名に「カトレヤ（Cattleya）」と献名することで、キャトレーの好意に報いました。1820年には、21歳でロンドン・リンネ協会の会員に選出されました。
1821年から1826年にかけては、自ら描いた彩色図版を含むフォリオ版の「Collectanea botanica or Figures and botanic Illustrations of rare and curious exotic Plants」を出版しました。この中で取り上げられた植物の多くは、リンドリーが生涯にわたって魅せられていたランでした。1822年にはロンドン園芸協会の副事務局長となり、1829年にはユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの植物学教授に就任し、1860年までその職を務めました。また、1831年からは王立研究所で植物学を教え、1830年代後半からはチェルシー薬草園でも教鞭をとりました。
その他の活動
リンドリーは1838年に西オーストラリアを探検したトーマス・ミッチェル隊のジェームズ・ドラモンドとジョージアナ・モロイが収集した植物を調査し、1839年に「Appendix to Edwards's Botanical Register」を発表しました。
専門的な研究書だけでなく、一般向けの著書も多く執筆し、園芸協会の「Botanical Register」の編集を長く担当しました。また、「園芸家年鑑（The Gardeners' Chronicle）」にも貢献しました。この「園芸家年鑑」は、1841年にジョセフ・パクストン、チャールズ・ディルク、ウィリアム・ブラドベリーとともに創刊し、リンドリーは初代編集長を務めました。
1845年秋にアイルランドでジャガイモ飢饉が発生すると、リンドリーは化学者のライアン・プレイフェアと共に、ジャガイモ疫病の原因究明のためにアイルランドに派遣されました。11月中旬に提出した報告書で被害の深刻さを訴えましたが、疫病の原因を「雨による腐食」と誤って結論づけました。今日では、ジャガイモ疫病の原因は疫病菌であることが明らかになっています。
1828年には王立協会の会員に選出され、1857年には王立協会のロイヤル・メダルを受賞しました。
主な著書
リンドリーは生涯で数多くの著作を出版しました。以下は、その主なものです。
An Outline of the First Principles of Horticulture (1832)
An Outline of the Structure and Physiology of Plants (1832)
Nixus Plantarum (1833)
The Genera and Species of Orchidaceous Plants (1835)
A Natural System of Botany (1836)
The Fossil Flora of Great Britain (1831–1837) - ウィリアム・ハットンとの共著
Flora Medica (1838)
Theory of Horticulture (1840)
The Vegetable Kingdom (1846)
Folia Orchidacea (1852)
Descriptive Botany (1858)
Appendix to the first twenty-three volumes of Edwards's botanical register (1839)
Collectanea botanica (1821–1826) - リチャードとアーサー・テイラーとの共著
Edwards' botanical register (1829–1847) - ジェームズ・リッジウェイとの共著、Vol. 15-33
Einleitung in das natürliche System der Botanik (1833)
The genera and species of orchidaceous plants /by John Lindley. (1830–1840)
Medical and oeconomical botany /by John Lindley (1849)
Monographie du genre rosier, traduit de l'anglais de J. Lindley ...par M. de Pronville (1824) - オーギュスト・ド・プロンヴィルとの共著
Paxton's flower garden /by Professor Lindley and Sir Joseph Paxton (1853) - ジョセフ・パクストンとの共著
Sertum orchidaceum:a wreath of the most beautiful orchidaceous flowers /selected by John Lindley. (1838)
Ladies' Botany (1834–37)
参考文献
Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Lindley, John" . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 16 (11th ed.). Cambridge University Press.
Boulger, George Simonds [in 英語] (1893). "Lindley, John" . In Lee, Sidney (ed.). Dictionary of National Biography (英語). Vol. 33. London: Smith, Elder & Co. pp. 277–279.
Rines, George Edwin, ed. (1920). "Lindley, John". Encyclopedia Americana (英語).
"ジョン・リンドリーの関連資料一覧" (英語). イギリス国立公文書館. （英語）
John Lindley (1799-1865) - ナショナル・ポートレート・ギャラリー （英語）
* John Lindley - Find a Grave（英語）
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