ジョン・ルース

ジョン・ヴィクター・ルース：日米の架け橋となった弁護士

ジョン・ヴィクター・ルース（John Victor Roos）は、1955年2月14日生まれのアメリカ合衆国の弁護士であり、実業家、そして外交官です。彼は、第28代駐日アメリカ合衆国大使を務めたことで特に知られています。

生い立ちと教育

カリフォルニア州サンフランシスコで育ったルースは、1973年にローウェル高校を卒業後、スタンフォード大学に進学しました。1977年に同大学を卒業し、1980年には同ロー・スクールで法務博士号（JD）を取得しました。学部時代には優等学生会であるファイ・ベータ・カッパ・ソサエティーの会員に選ばれ、ロー・スクール時代にはロー・レビューの編集委員、そして全米優等法学生会であるオーダー・オブ・ザ・コイフの会員にも選ばれるなど、優秀な学生でした。

法曹界での活躍

ルースはカリフォルニア州の弁護士資格を取得後、ロサンゼルスの法律事務所に勤務しました。その後、シリコンバレーのパロアルトにあるウィルソン・ソンシニ・グッドリッチ・アンド・ロサティ法律事務所（Wilson Sonsini Goodrich & Rosati）に入所し、1988年にはパートナーに、2005年2月には最高経営責任者（CEO）および理事に就任しました。彼の専門分野は、成長企業の金融および証券業務であり、多くの企業の顧問を務めました。また、会社合併、株式公開、企業提携などの業務にも携わり、多くのベンチャー・キャピタルの立ち上げにも貢献しました。その実績は高く評価され、アメリカの著名弁護士を紹介する『ベスト・ロイヤーズ・イン・アメリカ』に、2007年から2009年まで連続で掲載されました。

公的活動と政治活動

ルースは、1991年から1999年までカリフォルニア州教育委員会の委員を務め、教育分野にも貢献しました。スタンフォード大学では、教育学部長諮問委員会と法科大学院学部長諮問委員会のメンバーを務めました。また、長年にわたるボランティア活動が認められ、スタンフォード・アソシエートのメンバーにも選ばれています。2008年のアメリカ合衆国大統領選挙では、バラク・オバマ陣営の資金調達を担い、約50万ドル以上の資金を集めるなど、オバマ大統領の誕生に大きく貢献しました。オバマ大統領就任後も、側近として活動しました。

駐日アメリカ合衆国大使としての活動

2009年5月27日、オバマ大統領はルースを駐日アメリカ合衆国大使に指名する意向を正式に発表しました。当時、ルースは日本との関係が薄く、外交経験もなかったため、一部からは日本軽視ではないかという声も上がりましたが、オバマ大統領との個人的な信頼関係の厚さから、この人事は日本にとって大きな意味があるという見方も多くありました。同年8月6日に上院で承認され、8月16日に就任宣誓を行い、大使としての活動を開始しました。

2009年8月19日に日本に到着したルースは、成田空港での記者会見で、「シリコンバレー出身である私は、不可能はないと信じている。日米が協力すれば、達成できないことはない」と述べ、日米関係への意欲を示しました。翌日には、皇居で信任状を奉呈し、外務省を訪れて藪中三十二外務事務次官と会談し、日米関係の緊密化に努める考えを表明しました。鳩山由紀夫首相（当時）とはスタンフォード大学の同窓生であり、首相就任直前の会談では、大学のアメリカンフットボールチームのヘルメットを自宅から持参して会談するなど、親睦を深めました。

駐日大使在任中は、政権交代が相次ぐ難しい時期でしたが、日米関係の維持に重要な役割を果たしました。2010年には、アメリカ政府代表として初めて広島平和記念式典に出席し、その後も長崎の平和祈念式典にも参加するなど、平和へのメッセージを発信し続けました。また、東日本大震災発生時には、広範な分野での支援活動を指揮し、その卓越したリーダーシップと革新的なマネージメントが評価され、アメリカ合衆国国務省から「スー・M・コブ賞」が授与されました。大使在任中に日本の47都道府県全てを訪れ、政府関係者や経済界、学生など、幅広い層との対話を通じて、日本への理解を深めました。また、日米の次世代リーダー育成を目的とした「TOMODACHIイニシアチブ」の創設にも尽力し、その功績が認められ、国務省の「特別金賞」を受賞しました。

ルースは、駐日大使として初めてTwitterアカウントを開設し、日本語と英語で情報発信を行い、人々との交流を図りました。2013年8月に大使を退任する際には、「妻のスージーと私は、いつまでも日本のトモダチです」と述べるなど、日本への深い愛情を示しました。

大使退任後の活動

駐日大使退任後も、ルースは実業界で幅広く活躍しています。セールスフォース・ドットコム（現・セールスフォース）の取締役、The Roos Group CEO、三菱UFJフィナンシャル・グループのグローバル・アドバイザリーボード委員などを歴任しました。また、ソニーや楽天の取締役にも就任し、日本との関係を継続しています。2022年には、旭日大綬章を受章しました。

家族

妻のスージーとの間に、娘のローレンと息子のデービッドがいます。ローレンはロサンゼルスの病院で看護師として勤務し、デービッドはスタンフォード大学で学んでいます。

ジョン・ヴィクター・ルースは、弁護士、実業家、そして外交官として、日米関係の発展に大きく貢献しました。彼の多岐にわたる活動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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