ジョヴァンニ・ジョリッティ

ジョヴァンニ・ジョリッティ

ジョヴァンニ・ジョリッティ（Giovanni Giolitti, 1842年10月27日 - 1928年7月17日）は、19世紀末から20世紀初頭にかけてイタリア王国で活躍した、自由主義派を代表する政治家です。計5回にわたり首相の座に就き、その在任期間は1892年から1921年に及びました。

クーネオ県のモンドヴィに生まれたジョリッティは、ブルジョワ階級の出身でした。彼が活動した時代のイタリア政界は小党派が分立し、極めて不安定な状況にありました。ジョリッティは、こうした混沌とした状況下で、驚くべき政治的才能を発揮します。極左から極右に至る多様な党派の主張に耳を傾け、時に大胆な妥協を成立させることで、政権運営を可能にしました。また、彼は自らに有利な選挙結果をもたらすための介入手法や、政府機関、議会内部に自身の協力者からなる強固なネットワーク、いわゆる「ジョリッティ体制」を構築することで、イタリア政治において支配的な地位を確立しました。

首相として特に功績を上げたのは、20世紀初頭の工業化の推進です。彼の指導の下、イタリアは近代的な産業国家へと着実に歩みを進めました。

第一次世界大戦が勃発した際には、イタリアの中立を主張しました。しかし、戦後、1920年に再び首相に就任した際、イタリアは深刻な経済不況に見舞われ、労働運動や貧しい農民による暴動が全国で頻発していました。ジョリッティは、高まる社会不安に対して、労働運動の穏健派リーダーたちとの根気強い交渉を通じて事態の鎮静化を図り、一定の成果を上げました。また、戦後処理における重要な課題であったフィウーメ問題を巡っては、領有を強く主張する国内の強硬派を抑え込み、外交的な解決を目指しました。

総じて、ジョリッティは左右両極の急進的な動きを牽制しつつ、中道的な自由主義の立場を貫こうとしました。しかし、この過程でベニート・ムッソリーニと彼が率いるファシスト勢力の潜在的な力を過小評価した側面がありました。ジョリッティは、ファシストを利用して左右の過激派を抑え込むという戦術を試みましたが、これは結果としてファシズムの急速な台頭を許す一因となったとも評価されています。晩年にはファシズムに反対の立場をとるようになりました。

ジョリッティの孫にあたるアントニオ・ジョリッティもまた政治家となり、イタリア共産党やイタリア社会党で活動し、予算大臣などの要職を歴任しました。

関連項目

ファシスト党
イタリアの首相
ベニート・ムッソリーニ
ガブリエーレ・ダンヌンツィオ
* フィウーメ問題

ジョヴァンニ・ジョリッティの生涯は、近代イタリア国家の黎明期における複雑な政治状況と、その中で権力を維持しつつ国家の発展に寄与しようとした一人の政治家の挑戦、そして新たな全体主義勢力の台頭という歴史の大きな転換点を象徴しています。彼の政治手腕は高く評価される一方で、ファシズムに対する初期の対応については、今日に至るまで様々な議論がなされています。彼の「ジョリッティ体制」は、イタリアの政治文化に大きな影響を与えた構造としても記憶されています。彼は1928年7月17日にその生涯を終えました。

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