イタリア社会党

イタリア社会党(PSI): 102年の興亡とイタリア政治への影響

イタリア社会党(Partito Socialista Italiano, PSI)は、イタリアにおける歴史上重要な政党であり、その102年の歴史はイタリアの政治的、社会的な変動を如実に反映しています。純粋な社会主義政党として出発したPSIは、やがて議会制民主主義を受け入れ、社会民主主義政党へと変貌を遂げました。本稿では、PSIの興隆と衰退、そしてその歴史的意義を詳しく解説します。

黎明期と党内対立

1892年、ジェノヴァで結党されたPSIは、当初はミラノを拠点とするイタリア労働党とリミニを中心とするイタリア革命社会党の合流によって誕生しました。弁護士フィリッポ・トゥラーティ、アンドレア・コスタ、アンナ・クリショフといった人物が党指導者となり、党運営を担いました。しかし、結党当初から、穏健な社会民主主義を志向するトゥラーティ派（改良主義者）と、革命的なマルクス主義を主張するラザーリ派（最大限綱領派）の間で激しい党内対立が勃発します。この対立は、後にムッソリーニの入党によってさらに激化し、1912年には改良主義派が離党、イタリア改良主義社会党を結成する事態にまで発展しました。

第一次世界大戦とファシズム

第一次世界大戦は、PSIをさらに分裂の危機に突き落としました。参戦支持派と反対派の対立は、ムッソリーニの離党と国家ファシスト党の結成へとつながります。ムッソリーニの台頭とファシズムの勃興は、PSIにとって大きな脅威となり、党は次第に勢力を衰えさせ、1925年には非合法化されました。第二次世界大戦中は、レジスタンス運動に参加し、終戦後、再結党を果たします。

冷戦期と政権与党への躍進

戦後のイタリアでは、PSIは共産党との共闘を試みましたが、失敗に終わります。その後、反共主義を掲げ、キリスト教民主党との連立政権に参加。1980年代には、ベッティーノ・クラクシ書記長の下、社会党出身の大統領と首相を輩出するなど、空前の勢力を誇るようになりました。しかし、この隆盛の裏で、大企業との癒着や汚職疑惑がくすぶっていました。

タンジェントポリと解党

1992年、イタリアを揺るがす一大政治スキャンダル「タンジェントポリ」が勃発。この事件は、PSIの腐敗と権力乱用を白日の下に晒し、党の支持率は急落しました。クラクシ書記長はチュニジアへ亡命し、PSIは1994年、解党という結末を迎えます。

解党後とその後継政党

PSIの解党後、いくつかの後継政党が設立されましたが、いずれもPSIほどの勢力を回復することはできませんでした。これらの政党は、主にイタリア南部に支持基盤を持ち、イタリア政治における社会主義・社会民主主義勢力の断絶を象徴する存在となっています。

まとめ

イタリア社会党は、イタリア社会主義運動の中核を担い、イタリア政治に多大な影響を与えた政党でした。しかし、党内対立、ファシズムの台頭、そしてタンジェントポリによる腐敗発覚を経て、102年の歴史に幕を閉じました。その興亡は、イタリア政治史のみならず、社会主義・社会民主主義運動の盛衰を理解する上で、極めて重要な事例として位置付けられます。PSIの歴史を分析することは、現代イタリアの政治状況を理解するための重要な鍵となるでしょう。

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