ジョヴァンニ・バッチスタ・カプロニ

ジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニ

イタリア航空史のパイオニア

ジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニ（1886年 - 1957年）は、イタリアの著名な航空技術者、航空機設計者であり、同国を代表する航空機メーカー、カプローニ社の創業者です。土木工学と電気工学という幅広い専門知識を持ち、航空機開発の黎明期からその生涯にわたり、イタリアの航空産業発展に極めて重要な役割を果たしました。自らの技術力と起業家精神をもって、航空技術の実用化と進化を牽引した、イタリア航空史における偉大な人物の一人です。

生い立ちと教育

1886年7月3日、カプローニは現在のイタリア・トレント県にあたる地域で生を受けました。若い頃から工学への非凡な才能を示し、当時のヨーロッパの主要な大学で高度な専門教育を受けました。1907年にはドイツのミュンヘン工科大学で土木工学の学位を取得。さらに翌1908年には、ベルギーのリエージュ大学で電気工学の博士号を取得しています。土木と電気という異なる分野で深い知識を得たことは、航空機という複雑なシステムの設計において、彼に独自の視点と解決策をもたらす基盤となりました。

航空界への参入と創業

大学での研究を終えたカプローニは、未来の交通手段として大きな可能性を秘めていた航空分野に情熱を注ぎます。1907年から数年間、航空用エンジンの開発や実験に精力的に取り組みました。この時期、ベルギーでグライダーの研究中に、後に航空界で名を馳せるルーマニアの技術者アンリ・コアンダと出会い、技術的な交流や共同作業を行っています。

航空機の実用化と普及を目指し、カプローニは1908年にイタリアのミラノに自身の会社を設立しました。当初は複葉機の製造から開始し、迅速な開発と試験体制を構築するため、翌1909年にはソンマ・ロンバルド近郊に専用の飛行場と開発拠点を整備しました。この場所は、現在のミラノ・マルペンサ国際空港の歴史的な出発点の一つとなります。

初期モデルの開発と成功への転換

カプローニ社が最初に開発した機体は、イタリアで初めて製造された実用的な航空機とされる複葉機Ca.1です。しかし、1910年の記念すべき初飛行は、機体が損壊するという厳しい結果に終わりました。カプローニはこの挫折から多くの教訓を得て、設計の見直しを行います。

1911年、彼はよりシンプルで効率的な単葉機へと開発の主軸を移しました。この方向転換が功を奏し、カプローニ社は技術的な成功を収め始めます。続く開発の中で、1914年にはイタリアで初めて全動力飛行を成功させた先進的な三発複葉機を開発。この機体は後にCa.31として知られ、カプローニの技術力の高さを証明しました。

二つの世界大戦と産業の牽引

第一次世界大戦が勃発すると、カプローニはイタリア軍の要請に応じ、長距離を飛行可能な大型爆撃機の開発に集中的に取り組みました。彼の設計した爆撃機は、その優れた性能からイタリア軍だけでなく、フランスやイギリスなどの連合国軍でも採用され、戦局に影響を与える重要な兵器となりました。この戦時中の貢献により、カプローニ社の名声は国際的に不動のものとなり、イタリア航空産業におけるその地位を確立しました。

戦後、カプローニは民間航空輸送の可能性に大きな期待を寄せ、旅客機Ca.48や巨大飛行艇Ca.60などを試作しますが、事故や技術的困難によりその道のりは平坦ではありませんでした。しかし、この間もカプローニは技術革新への意欲を失わず、ジェット推進の萌芽となる実験機（スティパ・カプローニ、カプローニ・カンピニ N.1）の開発など、未来を見据えた取り組みを行いました。この時期、カプローニ社は多数の子会社を持つ一大複合企業へと成長し、国家への貢献から「タリエド伯」の称号を得ています。

第二次世界大戦中も、カプローニ社はイタリア軍へ様々な航空機を供給しました。

その後のカプローニ社と晩年

終戦後、航空産業の再編が進む中で、親会社であるソチェタ・イタリアーナ・カプローニは1950年に活動を停止しました。しかし、カプローニグループの一部事業や子会社はその後も存続しました。

ジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニは、イタリア航空産業の黎明期から発展期にわたり多大な貢献を残し、1957年10月27日にローマで81年の生涯を閉じました。彼の功績は、情熱をもって空の技術に挑んだパイオニアとして、今なお記憶されています。

*日本のスタジオジブリ制作アニメーション映画『風立ちぬ』（2013年公開）には、彼をモデルとした人物が登場し、主人公との交流が描かれています。

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