複葉機

複葉機の概要

複葉機（ふくようき、英: Biplane）とは、飛行機のファミリーのひとつで、主翼が二枚以上、通常は二枚で構成されている機体を指します。三枚以上の主翼を持つ機体は三葉機や多葉機と識別されますが、一般に複葉機とされるものは主に上下に配置された二枚の翼に焦点を当てます。一方、ミサイル形状の二枚の翼が直交するものは複葉機として分類されません。

複葉機の歴史的背景

飛行機の初期段階では、エンジン出力が限られているため、効率的な揚力を生み出すためには大きな翼面積が必要でした。この理由から、布張りの木製構造では強度が弱く、短い翼を上下に配置し、桁やワイヤーを使って強度を賄う複葉機方式が採用されました。

しかし、複葉機設計の課題として、上下の翼の流れの干渉や、接続ワイヤーによる抗力があり、効率が悪化する側面もありました。こうした問題を抱えつつも、1920年代から1930年代にかけて複葉機と単葉機が共存し、両者の競技が行われていました。例えば、1925年にはカーチスR3C-2という複葉機が単葉機に対し優位を示す結果も残しています。

第二次世界大戦期に入ると、練習機や観測機を省き、航空機の主流は単葉機に移行しましたが、複葉機は依然として様々な国で使用され続けました。特にイタリアでは複葉戦闘機CR.42が1942年まで生産され、戦争の局面で活躍しました。最近の例では、2020年ナゴルノ・カラバフ紛争において、アゼルバイジャンが無人の複葉機An-2を使用して敵のレーダー網を探知する作戦を行っています。

複葉機の特性

複葉機の特徴として、省スペース性やロール特性の優れた点が挙げられます。現代でもスポーツ機や農業機、ウルトラライトプレーンに利用されている場面もあり、航空力学の研究対象としては誘導抗力や衝撃波の低減に関する試みが行われています。

一葉半形式（セスキプラン）

セスキプランは、片方の翼がもう一方に比べて小さい複葉機の一形態です。この構成は複葉機の優位性を残しつつ、空気抵抗と重量の削減を目指したものです。ニューポール社が製造した数々の軍用機がその代表例です。

先進的な複葉機設計

1930年代にドイツの航空工学者アドルフ・ブーゼマンが提唱したブーゼマン複葉翼は、衝撃波の干渉を利用した設計でしたが、さまざまな制約が浮き彫りになり、実用化はされませんでした。

有名な複葉機の例

複葉機は数々の歴史的機体が存在し、特に第一次世界大戦期のフォッカーDr.IやアルバトロスD.IIIなどが名を馳せています。さらに戦間期や第二次世界大戦期においても日本の九五式艦上戦闘機や、アメリカのボーイング・ステアマン モデル75のような有名な機体が存在しました。

現代における複葉機

現代でも、ピッツ・スペシャルのような曲技飛行用複葉機から、農業用に設計されたグラマン アグキャットまで、さまざまな複葉機が活躍しています。複葉機の考え方はいまだに航空機設計の基盤に残っており、さらなる研究と開発が期待されます。

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