ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリ

17世紀イタリアのイエズス会士で天文学者のジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリ（1598年 - 1671年）は、天文学、物理学、地理学など多分野で活躍しました。特に、詳細な月面図作成と、現在も使われる月面地形への命名法の基礎を築いたことで知られています。

リッチョーリは1598年にフェラーラで生まれ、1614年にイエズス会へ入会。そこで学術研究に邁進し、同僚のフランチェスコ・マリア・グリマルディと共に多くの研究を行いました。その生涯は主に研究活動に費やされ、1671年にボローニャで没しました。

主な業績は以下の通りです。

『新アルマゲスト』

1651年刊の主著『新アルマゲスト』は、当時の天文学知識を集大成する一方、コペルニクスの地動説に対して批判的な論陣を張りました。しかし、地動説と天動説の様々な論拠を詳細に比較しており、後世の地動説研究者にも参照される文献となりました。

月面研究と命名法

グリマルディとの共同研究で、リッチョーリは精密な月面図を作成しました。そして、図中のクレーターなどに体系的な命名法を導入した点が特筆されます。彼らは多くのクレーターに著名な科学者の名を冠し、この方式が現代まで続く月面地形命名の基礎となりました。自身は地動説に反対しながらも、コペルニクスやガリレオといった地動説論者の名をクレーターに残し、またティコ・ブラーエ最大のクレーターに、そしてその近くに自身の名を付けています。

物理学・測地学

自由落下物体の加速度測定を行った初期の研究者であり、また、グリマルディと共に子午線弧長の測量による地球サイズ測定も試みました（1644-1656）。この測量精度は、先行したスネルの研究に及ばなかったとされています。

二重星発見

1650年、おおぐま座のミザール星を望遠鏡で観察し、これが二つの星から成る二重星であることを確認しました。これは観測史における最初の二重星発見例の一つです。

世界人口推計

著書『Geographiae et hydrographiae reformatae libri』（1661年）では、史上初めて体系的な世界人口推計を試みました。ヨーロッパの人口を基に類推し、当時の世界人口を約10億人と見積もったこの試みは、初期の人口学研究として重要です。

その他の著作

『新アルマゲスト』の他に、『Geographiae et hydrographiae reformatae libri』（1661）、『Astronomia reformata』（1665）、『Chronologia reformata』（1669）、『Tabula latitudinum et longitudinum』（1689）などがあります。

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