ジョージア侵攻 (1742年)

ジョージア侵攻：18世紀の英西、植民地を巡る攻防

1742年、ジェンキンスの耳の戦争の最中、スペインがジョージア植民地を攻撃したジョージア侵攻は、北米大陸におけるイギリスとスペインの植民地を巡る対立を象徴する出来事です。スペインはフロリダ植民地の領有を主張し、ジョージアを不法占拠と見なしていました。紛争解決の試みが失敗に終わると、スペインは武力による解決を選択しました。

侵攻の背景：領土を巡る対立

1733年、イギリスによってジョージア植民地が建設されてから、この地はイギリスとスペインの係争地となっていました。スペインはジョージアをフロリダの一部と主張し、イギリスの入植者を不法占拠者と見なしていました。1739年のエル・パルド協定も紛争解決には至らず、ジェンキンスの耳の戦争勃発を機に、スペインはジョージア侵攻を決意します。

イギリスのジョージア総督ジェームス・オグルソープは、先制攻撃としてフロリダを侵攻しますが、サン・アウグスティンの包囲に失敗し撤退。この失敗により、スペイン軍はジョージアへの攻撃を開始する機会を得ました。当時のイギリスは他の戦線にも戦力を割いており、ジョージアへの十分な援軍を送ることができませんでした。

侵攻と戦闘：ガリー・ホール・クリークの戦いとブラッディ・マーシュの戦い

1742年7月、マヌエル・デ・モンティアーノ総督率いるスペイン軍は、4,500～5,000人の兵力でジョージアに侵攻。セント・サイモンズ砦への砲撃後、スペイン軍はフレデリカ川近くに上陸。オグルソープは砦を放棄し、スペイン軍に利用されないよう破壊しました。

スペイン軍は偵察を開始し、7月18日にはセバスティアン・サンチェス大佐率いる偵察隊がガリー・ホール・クリークでイギリス軍と遭遇。このガリー・ホール・クリークの戦いで、スペイン偵察隊は大きな損害を受け敗走しました。さらにイギリス軍は追撃をかけましたが、スペイン軍の増援部隊の接近により退却を余儀なくされました。

イギリス軍は、ミリタリー・ロードの曲がり角で待ち伏せ、ブラッディ・マーシュの戦いでスペイン軍を奇襲。イギリス軍の攻撃により、スペイン軍は約200人の死者を出し、進軍は阻止されました。この勝利は、イギリス軍にとって決定的なものとなりました。

スペイン軍の撤退：欺瞞と援軍到着の誤認

モンティアーノは軍を再編成し、再度の進軍を試みますが、オグルソープは様々な策略を用いてスペイン軍を撤退に追い込もうとします。イギリス側から寝返ったフランス人脱走者が、イギリス軍の兵力が少ないことをスペイン側に伝えることを恐れたオグルソープは、軍楽隊を使い兵力を多く見せかけます。

さらに、脱走者がスパイとして処刑されるよう仕向け、イギリスからの援軍が到着したかのように見せかけました。この情報操作が功を奏し、スペイン軍は援軍の到着を信じ込み、7月25日にセント・サイモンズ島から撤退。ジョージア植民地への最後の侵攻は終わりを迎えました。

その後：ジョージアの地位確立

スペイン軍撃退後、オグルソープはフロリダへの反撃を計画しますが、戦況の変化により実現には至りませんでした。1748年のアーヘンの和約で戦争が終結し、ジョージアはイギリス植民地として承認され、スペインもマドリード条約でこれを認めました。1763年のパリ条約によりスペインがフロリダをイギリスに割譲すると、ジョージアの地位は確固たるものとなりました。

現在、サバンナのワームズロー史跡地では、毎年5月最後の土曜日にジェンキンスの耳の戦争の記念行事が行われています。この戦いは、イギリスとスペインが北米の覇権を争った歴史を今に伝えるものとして、記憶されています。

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