ジョージ湖の戦い

ジョージ湖の戦い：フレンチ・インディアン戦争の一幕

ジョージ湖の戦いは、1755年 9月8日に現在のニューヨーク州北部で発生した、フレンチ・インディアン戦争における重要な戦闘です。イギリスが北米からフランスを駆逐しようとした作戦の一環として位置づけられます。

戦いの背景

フランス軍はディスカウ男爵ジャン・エルドマンが率い、兵力はインディアン兵を含めて約1500人でした。対するイギリス軍は、サー・ウィリアム・ジョンソンが率いる13植民地軍が1500人、そして族長ヘンドリック・テヤノギン率いるモホーク族の兵200人でした。

ウィリアム・ジョンソンはイロコイ族へのエージェントとして任命されており、1755年 8月28日に「サンサクルマン湖」（現在のジョージ湖）南端に到着。この湖をイギリス国王ジョージ2世に敬意を表してジョージ湖と改名しました。ジョンソンの計画は、ジョージ湖とシャンプラン湖を経由して、フランスが支配するサンフレデリック砦とクラウンポイントを攻撃することでした。クラウンポイントはヌーベルフランスの防衛拠点でした。

ディスカウはジョンソンの進軍を阻止するため、すでにクラウンポイントを出発し、ジョージ湖とシャンプラン湖の間のカリヨン砦（後のタイコンデロガ砦）に陣を構えていました。9月4日、ディスカウはハドソン川沿いに新設されたエドワード砦（当時はライマン砦）を襲撃することにしました。この砦はジョンソンの野営地であり、ディスカウはイギリス軍の物資や大砲を輸送する船を破壊しようとしました。ディスカウはカリヨン砦に半分の兵を残し、残りの兵を別の水路からハドソン川へ進ませ、サウスベイで船を降り、ウッドクリーク沿いに進軍しました。

戦闘の経過

1755年 9月7日の夕方、ディスカウ率いるフランス正規歩兵連隊（ラ・レーヌ連隊、ラングドック連隊）の222名、民兵600名、アベナキ族とモホーク族の同盟軍700名がエドワード砦に到着しました。ジョンソンはジョージ湖の南端にあるエドワード砦から北へ23キロの地点に野営しており、斥候から敵の接近を知らされました。ジョンソンは砦の500名の兵に知らせるために伝令を送りましたが、伝令は捕らえられ、物資を運搬していたイギリスの隊列が攻撃を受け、ジョンソンの計画はディスカウに漏れてしまいました。

フランス軍に合流していたインディアン兵は、会議を開いた後、大砲の砲撃を恐れて砦の占領を断念しました。9月8日の朝、ディスカウは軍に湖への進軍を命じました。9月8日の午前9時、ジョンソンはマサチューセッツ連隊1000名を率いるエフライム・ウィリアムズ大佐と、コネチカット連隊とモホーク同盟兵200名を率いるネイサン・ホワイティング大佐に、エドワード砦への援軍を命じました。ウィリアムズ連隊の脱走兵からの警告で、ディスカウは正規兵とともに水路を封鎖し、民兵とインディアン兵に道の両側で待ち伏せさせました。

血塗られた朝の偵察

ウィリアムズの隊列はフランス軍の待ち伏せに遭い、銃剣による猛攻を受けました。この交戦は「血塗られた朝の偵察」として知られています。ウィリアムズとヘンドリックは多数の兵と共に戦死しました。フランス正規兵は包囲された敵兵に一斉射撃を浴びせました。13植民地軍の大部分はジョンソンの野営地に撤退し、ホワイティングやセツ・ポメロイ中佐の指揮下にあった兵士やモホーク兵は、銃撃戦を展開しながら撤退しました。ポメロイは自軍の兵士たちが「敵軍の多くを倒した。フランス兵は、あたかも鳩が撃ち落されるようだった」と記録しています。この撤退時に、ジャック・レガルデュール・ド・サンピエールというフランスの将校が戦死し、インディアン兵やヌーベルフランスの行政官たちは落胆しました。

イギリス軍野営地の襲撃

ディスカウは民兵とインディアン兵にジョンソンの野営地を襲撃するよう指示しましたが、サンピエールの戦死で士気が低下しており、モホーク族は塹壕が掘られた野営地の攻撃を躊躇しました。イギリス軍にもモホーク族が数百人おり、フランスと同盟関係にあったアベナキ族もモホーク族が進軍しない限り動こうとしませんでした。ディスカウは222名の正規兵を率いて、ジョンソンの野営地へと進軍しましたが、野営地近くの急ごしらえの防塞からの砲撃を受け、大きな損害を出しました。ジョンソンが負傷したため、フィネアス・ライマンが指揮を引き継ぎました。

血の沼（ブラッディ・ポンド）

一方、エドワード砦のジョセフ・ブランカード大佐は、遠くの戦闘による噴煙を目にし、ナサニエル・フォルソム率いる民兵隊を偵察に向かわせました。フォルソムの軍はフランス軍の守備隊を追い払い、物資を奪取しました。この戦闘で戦死したフランス兵の遺体は沼に投げ込まれ、その沼は後に「ブラッディ・ポンド」として知られるようになりました。フランス軍の撤退後、13植民地軍は約20名の重傷を負ったフランス兵と将校を発見しました。

戦いの結果とその後

ジョージ湖の戦いでの死傷者数には諸説ありますが、イギリス軍の死傷者は約262名、フランス軍は約228名とする説や、フランス軍の死傷者が500～600名とする説があります。この戦いは決定的とは言えず、ジョンソンの遠征もサンフレデリック砦に到達しませんでしたが、戦略的には大きな意味を持ちました。ジョンソンはジョージ湖の南端にウィリアム・ヘンリー砦を建設し、その成果を確固たるものにしました。歴史家のフレッド・アンダーソンは、ディスカウがエドワード砦でジョンソンを阻止できていれば、イギリスの脅威を阻止し、ニューヨークと13植民地の防衛線をオールバニまで後退させることができただろうと述べています。

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