ジョー・アームストロング

ジョセフ・レスリー・アームストロング（Joseph Leslie Armstrong、1950年12月27日 - 2019年4月20日）は、イギリスを代表する計算機科学者であり、分散コンピューティングとフォールトトレラントシステムの分野で多大な貢献をしました。特に、並行処理に特化したプログラミング言語Erlangの共同設計者として、その名を知られています。

アームストロングは、17歳でメインフレーム上でのFORTRANプログラミングを始めたのを皮切りに、コンピュータサイエンスの世界に足を踏み入れました。その後、1972年にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで物理学の学位を取得。しかし、彼の関心は計算機科学へと移り、2003年にはスウェーデン王立工科大学にて博士号を取得しました。博士論文のテーマは「ソフトウェアエラーが存在する環境下での信頼性の高い分散システムの構築」であり、彼の研究の核となるテーマを反映しています。2014年からは同大学の教授として教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。

アームストロングの業績の中でも特筆すべきは、Erlangの開発への貢献です。Erlangは、並行処理や分散処理に優れたプログラミング言語として知られ、通信システムや金融システムなど、高い信頼性が求められる分野で広く利用されています。彼は、この言語の設計思想に深く関わり、その普及に大きく貢献しました。

アームストロングは、オブジェクト指向プログラミングに対して批判的な立場を取っていたことでも知られています。彼は、オブジェクト指向の複雑さがソフトウェアの信頼性を損なう可能性があると指摘し、よりシンプルでエラーに強い設計を提唱していました。彼のこの考え方は、Erlangの設計にも強く反映されています。

また、アームストロングは自身の研究成果を積極的に公表し、2007年には『Programming Erlang: Software for a Concurrent World』を出版。この書籍は、Erlangの入門書としてだけでなく、並行プログラミングの概念を学ぶ上でも非常に価値の高い教材として広く読まれています。2013年には、第二版が出版され、より最新の情報が盛り込まれました。

彼の功績は、計算機科学の分野におけるソフトウェアの信頼性向上に大きな影響を与え、多くの研究者や技術者にインスピレーションを与えました。アームストロングは、2019年4月20日に間質性肺炎を合併した感染症により68歳で亡くなりましたが、彼の遺した知識と技術は、今後も多くの人に受け継がれていくでしょう。

主な著書:

2007年: 『Programming Erlang: Software for a Concurrent World』 ISBN 978-1934356005
2013年: 『Programming Erlang: Software for a Concurrent World』 第二版 ISBN 978-1937785536

外部リンク:

Erlang and other stuff - Joe Armstrong's current blog
Armstrong on Software - Joe Armstrong's old weblog
Joseph Leslie Armstrong - Prof. Armstrong's home page at KTH
Joe Armstrong home page at the Swedish Institute of Computer Science

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