ジョー・ジャクソン (ミュージシャン)

ジョー・ジャクソンは、1954年、イングランドのバートン・アポン・トレントに生まれたミュージシャンです。本名はデイヴィッド・イアン・ジャクソン。11歳でヴァイオリンを始めますが、作曲への関心からピアノに転向。16歳からバーで演奏を始め、才能を開花させます。

高校卒業後は、奨学金を得てロンドンの名門音楽学校、ロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックに入学。クラシック音楽の研鑽を積みますが、ロックへの情熱を捨てきれず、大学卒業後は様々なバンドに参加。成功を収めるには至りませんでしたが、地道な活動が実を結び、1978年、A&Mレコードのプロデューサー、デヴィッド・カーシェンバウムに見出されます。

1979年、待望のデビューアルバム『ルック・シャープ！』を発表。収録曲「ゴット・ザ・タイム」は後にアンスラックスによってカバーされるなど、高い評価を得ます。その後も精力的に作品を発表し、1980年には『アイム・ザ・マン』と『ビート・クレイジー』をリリース。プリンス・リンカーン・トンプソンとのコラボレーションも見られます。

ツアー中に腺熱を患った後、スウィング・ジャズの一種であるジャイブに傾倒し、1981年には『ジャンピング・ジャイヴ』を発表。1982年にはニューヨークに移住し、ラテン音楽の影響を受けた『ナイト・アンド・デイ』を制作。このアルバムに収録された「ステッピン・アウト」は彼の代表曲となり、ビルボードチャートで6位を記録しました。

ニューヨークでの生活は、ジャクソンの音楽性に大きな影響を与えます。1984年発表の『ボディ・アンド・ソウル』は、その代表作の一つ。マツダ・ファミリアのCM曲にも起用された「The Verdict」や、彼の代表曲として名高い「You Can't Get What You Want」などが収録されています。その後も、ジャズやクラシックの要素を取り入れながら、独創的な手法でアルバム制作を続けました。

特に1986年のアルバム『ビッグ・ワールド』は、デジタル一発録音という革新的な手法で注目を集めました。オーバーダビングを一切行わず、バンドの全パートを同時に演奏。さらに観客を招き入れ、演奏中の雑音を極力排除することで、ライブの緊張感とスタジオレコーディングの高音質を両立させました。これは日本で「デジタル一発録音」と呼ばれ、音質への並々ならぬこだわりが感じられます。

1987年の『ウィル・パワー』ではオーケストラ編成を採用し、日本フィルハーモニー交響楽団との共演も果たしています。1988年には映画『タッカー』の音楽も担当。多様な分野で才能を発揮しました。

1990年代初頭は、うつ病に苦しむ時期を過ごしますが、1994年に復活。商業的な成功よりも自分自身の表現を追求し、『ナイト・ミュージック』を発表。母校のロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックの特別会員にも選ばれます。1999年には自叙伝的作品『A Cure For Gravity』を出版しました。

近年はジョー・ジャクソン・バンドを再結成し、シンプルなロックに回帰。積極的にツアーを行い、様々なアーティストとの共演も果たしています。2019年のアルバム『フール』からハイレゾ音源の配信も開始し、常に音楽表現を探求し続けています。また、彼は長年の喫煙者であり、ニューヨークやイギリス、そして現在のドイツでも、過度な禁煙条例に反対する活動を行ってきました。

彼の音楽活動は多岐にわたり、ロック、ジャズ、ラテン音楽、クラシックなど、様々なジャンルの要素を融合させ、独自の音楽世界を築き上げました。常に新しい手法に挑戦し続け、音楽史に名を刻む、革新的なミュージシャンと言えるでしょう。

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