ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界

ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界

『ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界』は、2012年にイギリスなど4カ国で製作された青春映画です。サリー・ポッターが監督を務め、主演はエル・ファニングがジンジャー役を、アリス・イングラートがローザ役を演じました。

ストーリー

物語は1945年のロンドンから始まります。病院で出産を迎えようとしていたナタリーは、隣のベッドのアノウシュカに励まされ、無事に娘ジンジャーを出産します。この出来事がきっかけで二人の母親は友情を深め、その娘であるジンジャーとローザも幼い頃から固い絆で結ばれた親友として育ちます。特にローザは、幼少期に父親が家を出てしまった経験が、その後の価値観に大きな影響を与えました。

1962年、17歳になった二人。おそろいの服を着るほど仲が良かったジンジャーとローザでしたが、ローザが酒に手を出し、奔放な行動をとるようになったことで、二人の間に少しずつ亀裂が入り始めます。ジンジャーの母親ナタリーは、ローザの存在が娘に悪影響を及ぼすのではないかと心配し、二人の交流を快く思っていませんでした。一方で、ジンジャーの父親ローランドは、ローザとの付き合いが娘の自立につながると気楽に考えていました。この親たちの意見の対立は、すでに冷え切っていたナタリーとローランドの夫婦関係をさらに悪化させます。自由奔放で魅力的なローランドは、他の女性と関係を持つことがあり、それがナタリーには受け入れられませんでした。また、ナタリー自身も、育児のために画家になる夢を諦めた過去があり、そのことを今でも悔やみ、現在の満たされない生活はその夢を断念したせいではないかと感じていました。

ローザが進級試験に失敗したため、二人は別々の学校に通うことになります。それでも二人はたびたび学校を休み、一緒に過ごしていました。その結果、ジンジャーの成績は次第に悪くなっていきます。詩人になることを志すジンジャーは、当時の反核運動に関心を寄せ、政治集会に参加するようになります。対照的に、奔放な振る舞いの裏で、ローザは熱心なカトリック教徒であり続けました。ローザはジンジャーを教会へ誘い、共に世界平和を祈ります。その教会で、ジンジャーはマーク司祭とメイ・ベラという女性に出会います。

やがて、ナタリーとローランドは離婚を決意します。家を出たローランドは独身生活を謳歌する一方、ナタリーはジンジャーの学校に家庭科の授業を増やすよう要望します。「いつか娘も自分のように家庭に入り、そして不幸な結婚生活を送らないように」という母親としての願いでしたが、思春期のジンジャーにその真意は伝わりませんでした。結局、ジンジャーはローランドの家で暮らすことになります。

ある日、ローランド、ジンジャー、ローザの三人はボート遊びに出かけます。この出来事を機に、ローザはローランドに惹かれていきます。彼女はローランドへの手紙で「あなたの心の痛みが分かる」と綴るなど、積極的にアプローチします。親友であるジンジャーがローランドの家にいることを口実に、ローザは彼との距離を縮めていきました。ジンジャーはその様子を戸惑いながら見つめるしかありませんでした。耐えきれなくなったジンジャーはナタリーの家へ移ろうとしますが、絵に没頭するナタリーの姿を見て、「これ以上、母の人生の邪魔をしてはいけない。また私のせいで絵を諦めるようなことがあってはならない」という思いにとらわれ、断念します。ローランドは自身の行動が父親として不適切であると自覚しつつも、ローザの抱える悲しみに共感するあまり、彼女と別れることができませんでした。ローザは自分とローランドなら永遠に愛し合えると信じて疑いませんでした。そんなローザに対し、ジンジャーは「あなたが年を取ったら、父さんはすぐ別の女に乗り換えるわ。母さんがそうだったようにね」と突き放すように言います。これに対し、ローザは「私はローランドさんの子供を妊娠しているの」と告白します。激しい動揺に見舞われたジンジャーは、そのまま反核デモに参加した際に逮捕されてしまいます。留置場で精神科医がジンジャーとの対話を試みますが、彼女は何も語りませんでした。精神科医はマーク司祭とベラに「ジンジャーが政治運動にのめり込んだのは精神的な問題の表れであり、深刻な疾患を抱えている」と伝えます。それを聞いたマーク2世は憤慨し、「ジンジャーは全く正気だ」と言い返しました。

ジンジャーの状況はさらに悪化し、「世界が終わる」と錯乱状態に陥るまでになります。彼女を追い詰めたのは、他ならぬ父親ローランドと親友ローザが恋愛関係になったという事実でした。そのことを知ったナタリーは激怒します。マーク司祭はローランドを「不誠実な男だ」と非難しますが、彼は「ジンジャーは自立した大人の女性だ」と反論します。ローランドは、ジンジャーが父親としての自分を必要としていることを理解していながらも、一人の男性として自分を愛してくれるローザを見捨てることはできませんでした。

ローランドの曖昧な態度は、やがて避けられない悲劇へと繋がっていくのでした。

キャスト

エル・ファニング - ジンジャー
アリス・イングラート - ローザ
アレッサンドロ・ニヴォラ - ローランド（ジンジャーの父）
アネット・ベニング - メイ・ベラ
ティモシー・スポール - マーク司祭
オリヴァー・プラット - マーク2世司祭
クリスティーナ・ヘンドリックス - ナタリー（ジンジャーの母）
ジョディ・メイ - アノウシュカ（ローザの母）

製作・評価

本作の主な撮影は、イギリスのケント州で行われました。

批評家からの評価は高く、Rotten Tomatoesでは107件のレビューに基づき支持率80%、平均点6.8/10を獲得しています。サイトの総評では、核戦争の脅威の中で揺らぐ二人の少女の友情を描いた見事な作品であり、主演のエル・ファニングの演技が特に高く評価されています。Metacriticでも26件のレビューによる加重平均値が69/100となっています。

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