ジンファンデル

ジンファンデル：カリフォルニアを代表する赤ワイン用ブドウ

ジンファンデル（Zinfandel）は、主にアメリカ西海岸のカリフォルニア州で栽培されている赤ワイン用のブドウ品種です。イタリアではプリミティーヴォ（Primitivo）という名で知られています。DNA解析の結果、ジンファンデルはクロアチア原産のツーリエンナーク・カーステラーンスキー（Crljenak Kaštelanski）という品種と遺伝的に同一であることが判明しました。この品種が18世紀にイタリアへ、19世紀中頃にアメリカへと伝わり、それぞれプリミティーヴォ、ジンファンデルと呼ばれるようになったと考えられています。

栽培の現状

アメリカ

カリフォルニアでは、ジンファンデルはカベルネ・ソーヴィニョン、メルローと並ぶ重要な赤ワイン用ブドウ品種です。かつてはブレンド用ワインの原料として使われることが多かったのですが、1990年代以降は栽培・醸造技術の向上により、高級ワインの原料としても利用されるようになりました。

ジンファンデルから造られる赤ワインは、一般的にボディが強く、アルコール度数が高めです。その味わいは、ブドウの熟成度合いや産地によって大きく変化します。冷涼な地域で収穫されたブドウからは、ラズベリーのような赤いベリー系の香りが生まれます。一方、温暖な地域で収穫されたブドウからは、ブラックベリー、アニス、黒胡椒のようなスパイシーな香りが生まれます。

カリフォルニアでは、ジンファンデルワインはスーパーマーケットでも手軽に購入できますが、日本ではまだ一部のインターネット販売や大型酒販店でしか入手できません。ただし、アメリカではロゼタイプの「ホワイト・ジンファンデル」の方が、ジンファンデルの赤ワインよりも人気があります。

イタリア

イタリアでは、プーリア州を中心にプリミティーヴォが栽培されています。イタリアワインは酸味が強いものが多いですが、プリミティーヴォのワインは特に強い酸味を持っています。また、色合いが濃く、木いちごのような香りを持つ力強い味わいが特徴です。DOCGやDOCといった格付けのワインはまだ少なく、セパージュを名乗るワインにはIGTクラスが多いです。

歴史

アメリカへの伝播

ジンファンデルがアメリカに伝わったのは1822年頃だと考えられています。ニューヨークの苗木商ジョージ・ギブスが、オーストリアから取り寄せた苗木の中にジンファンデルが含まれていました。その後、ロングアイランドの苗木商ウィリアム・ロバート・プリンスが、ハンガリー産の黒ブドウとして「ブラック・ジンファーデル・オブ・ハンガリー」という名前で販売しました。これが「ジンファンデル」という名前の由来になったとされています。

その後、プリンスと取引のあった園芸家ジョン・フィスク・アレンが、「ジンファーデル」から「ジンファンデル」への改名を提案し、現在の名称が誕生しました。また、同じ品種が「ブラック・セント・ピーターズ」という名前で販売されることもありました。

19世紀後半には、カリフォルニアでも「ブラック・セント・ピーターズ」の栽培記録が現れます。これらの苗木は東海岸から買い付けられたものと推測されています。ジンファンデルの名前が普及すると、「ブラック・セント・ピーターズ」として栽培されていた畑もジンファンデルと呼ばれるようになりました。

禁酒法

1919年にアメリカで禁酒法が制定されると、ワイン産業は大きな打撃を受けました。しかし、自家醸造は一定量まで規制の対象外であったため、ブドウジュースの形で出荷され、各家庭でワインが造られるようになりました。その結果、カリフォルニアではブドウ果汁の生産量が増加し、ジンファンデルの栽培面積も増加しました。

ホワイト・ジンファンデル

1973年、サター・ホーム・ワイナリーは、ジンファンデルの醸造中に偶然、ピンク色の甘いワインを生み出しました。これが「ホワイト・ジンファンデル」と名付けられ、予想外のヒットとなりました。ホワイト・ジンファンデルは、1980年代のアメリカで大きな人気を博し、ジンファンデル全体の消費量を押し上げました。

ジンファンデルは、カリフォルニアワインの歴史と深く結びついたブドウ品種であり、その多様な味わいは多くの人々を魅了しています。

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