スイス国立銀行

スイス国立銀行（SNB）の概要

スイス国立銀行（Schweizerische Nationalbank, Banque Nationale Suisse, Banca Nazionale Svizzera, Banca Naziunala Svizra）は、スイス連邦の中央銀行です。スイス連邦には4つの公用語があるため、正式名称も4つの言語で表記されます。総裁はトーマス・ジョルダン氏が務めています。

組織と資本

スイス国立銀行は株式会社（アクツィエンゲゼルシャフト）の形態をとっており、資本金の約55%はカントン（州）や州立銀行などの公的機関が出資しています。残りの株式は証券市場で取引されており、その大部分は個人が所有しています。スイス連邦は一切出資していません。

歴史的役割

過去には国際決済銀行（BIS）が行う金の現物取引に金庫室を提供し、預け入れ、保管場所の移動、外部への発送に応じて手数料を得ていました。その手数料は、ニューヨーク連邦準備銀行よりも高めに設定されていました。

2002年には、保有していた金の半分にあたる1300トンの売却益の使い道について国民投票が行われましたが、政府案（年金基金、各州、スイス連帯基金への均等配分）と右派案（全額年金基金）の両方が否決されました。

2007年には、設立100周年を記念して、スイス・ポストが1フラン切手と85ラッペン切手の2種類の記念切手を発行しました。これらの切手には、100スイス・フラン紙幣のデザインが採用されました。

金融政策

為替レートターゲット

2011年9月、スイス国立銀行はスイス・フランの対ユーロ相場に1ユーロ＝1.2フランの上限目標を設定しました。しかし、2015年1月15日にはこの上限を撤廃し、スイス・フラン相場が一時的に対ユーロで約30%も急騰しました。この突然の撤廃は、IMFにも事前に連絡されていませんでした。

これまでのフラン売り・ユーロ買いの市場介入により、外貨準備は国内総生産の7割にまで膨らんでいました。為替ターゲットの放棄により、一時的に1ユーロ＝0.8スイス・フランまでフラン高が進みましたが、その後1ユーロ＝約1.0スイス・フランに落ち着きました。このフラン高は、スイス国内の製造業や観光業に大きな打撃を与えました。

スイスの時計メーカーやアルペンスキーリゾートは、フラン高によって競争力を失い、スウォッチやリシュモンの株価も下落しました。スイス国立銀行は、この為替ターゲットによってスイスを深刻な害から守ったと主張しましたが、そのターゲットはもはや正当化されないとも述べました。

その後、スイス国立銀行は非公式な為替ターゲットを導入するのではないかという憶測が投資家の間で高まり、実際に為替市場に介入し、1ユーロ＝1.05スイス・フランの水準にまで達しました。

さらに、スイス国立銀行は為替市場への再介入の意向を示し、必要であればさらなる金利引き下げも示唆しました。スイス政府も、フラン高が景気減速をもたらすと警告していました。

スイス連邦貿易連合（SGB）は、フラン高がスイスの雇用と賃金に圧力をかけていると批判し、再度ユーロに対して公式な為替ターゲットを設定するようスイス国立銀行に要請しました。

マイナス金利

スイス国立銀行は、2015年1月22日に金利をマイナス0.25%にすると発表しました。これにより、商業銀行がスイス国立銀行に預ける当座預金に対して、手数料を支払うことになりました。ただし、1000万スイス・フランを下回る当座預金については、マイナス金利は適用されません。

マイナス金利導入の背景には、原油価格の下落、ロシアのルーブル安、ECBによる量的緩和の実施、世界的な景気後退への懸念などがありました。投資家が安全資産であるスイス・フランへの投資を増やし、フラン高が進むのを防ぎたいという思惑がありました。

スイス国立銀行総裁のトーマス・ジョルダンは、必要であれば無制限の外貨購入とさらなる金融政策を行う用意があると述べました。マイナス金利政策の導入に際し、一般向けの借入れ貸付にどの程度の金利を設定するかは各々の商業銀行が決めることになります。

過去にもスイス国立銀行は外国人が保有する資産に対してマイナス金利を導入したことがありますが、今回のマイナス金利政策とは比較できないと述べています。2022年 6月15日には、15年ぶりの利上げを行い、政策金利はマイナス0.25%になりました。

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