スイートシスリー

スイートシスリー：忘れられたハーブの香り

スイートシスリー（学名: Myrrhis odorata）は、セリ科に属する多年草で、ハーブの一種として知られています。スイートチャービル、グレートチャービル、そしてガーデンミルラといった様々な呼び名を持ち、分類学上はMyrrhis属を単独で構成する特異な存在です。

見た目と香り

スイートシスリーの最大の特徴はその繊細な見た目と芳醇な香りです。葉は灰緑色をしており、細かく裂けたシダのような形状をしています。柔らかな質感の葉は、草丈60～90cmの茎から茂り、夏には白い小花を散形花序に咲かせます。種子は長さ約35mm程で、収穫後1年で発芽能力を失います。

最も特徴的なのはその香りです。葉や茎を傷つけると、アニスを思わせる甘く清涼感のある香りが漂います。噛んでみると、アニスシードのような甘い味が口の中に広がります。この独特の風味は、古くから人々を魅了してきた所以でしょう。

生息地と生育環境

スイートシスリーはヨーロッパ全域に分布しており、原産地はアルプス山脈、ピレネー山脈、バルカン半島西部などと考えられています。主に森林地帯の川岸などに自生しており、湿った日陰を好んで生育します。民家の庭先で見かけることもあるようです。

現代における用途と歴史

現代の料理において、スイートシスリーはあまり広く用いられていません。薬草栽培家や一部の料理人以外には、その存在すら忘れられていると言っても過言ではないでしょう。しかし、その独特の風味と繊細な見た目は、料理にアクセントを加えるのに役立ちます。

具体的な用途としては、シダ状の葉を刻んでレタスの上に散らしたり、料理の飾りとして使用したりします。茎はカクテルのマドラーの代用品として活用できるほか、白い根を薄切りにしてスープに添えることもできます。また、白い花はケーキやサラダの装飾に用いることができます。

チャールズ・ブライアントの著書『食用植物の歴史』によると、スイートシスリーの用途はチャービルとほぼ同じで、胃を温める効果があるとされています。また、レタスなどの生野菜と合わせて食べると、より一層美味しくいただけると記されています。

忘れられたハーブの再発見

かつては薬草として、そして料理の素材として重宝されたスイートシスリー。現代ではその存在感が薄れてしまっていますが、その独特の風味と繊細な見た目は、改めて注目に値するのではないでしょうか。忘れられたハーブの、新たな魅力を再発見する機会となるかもしれません。

参考文献:

* バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント（編）『世界の食用植物文化図鑑』山本紀夫（訳）、柊風舎、2010年1月、262頁。ISBN 978-4903530352。"Myrrhis odorata" - Encyclopedia of Life

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