チャービル

チャービル：繊細な風味と多彩な用途を持つハーブ

チャービル(学名: Anthriscus cerefolium)は、セリ科シャク属に分類される一年草です。パセリに似た外見で、フレンチパセリやガーデンチャービルとも呼ばれ、マイルドな味わいが特徴のハーブとして古くから親しまれてきました。フランス名ではセルフィーユ、和名ではウイキョウゼリと呼ばれています。

形態と生態

チャービルはコーカサス地方が原産とされ、ローマ時代にはヨーロッパ全土に広まりました。現在では、アメリカ北東部などでも自生しています。草丈は40～70cmに成長し、細かく切れ込んだ葉はイタリアンパセリに似ていますが、より甘く、穏やかな香りが特徴です。小さな白い花は散形花序をなし、直径2.5～5cmになります。果実は約1cmの細長い楕円形または卵形です。

生育には直射日光と湿気を嫌うため、日陰の窓辺やベランダでの栽培が適しています。パセリとよく似ていますが、栽培条件は異なります。

歴史と文化

チャービルの歴史は古く、文献にはローマ時代から登場します。かつては雑草として扱われることもありましたが、19世紀後半に原産地が特定され、食材としての価値が見直されるようになりました。

特に根を食用とする種類は、葉用のチャービルとは異なり、太い根を芋として利用します。ただし、葉には毒性があるため食用には適しません。根を食用とするチャービルは19世紀には人気がありましたが、現在ではフランス料理の一部で使用される程度です。主な産地はフランスのロワール地方とブルターニュ地方で、年間生産量はわずか5トンです。中世にはロワール地方の貴族によって北欧から持ち込まれたとされています。第二次世界大戦後には栽培が減少しましたが、近年ではフランスの一部地域や日本の北海道でも栽培が再開されています。

食用としての利用

チャービルの茎や葉は食用、薬用として利用されます。旬は3～6月で、葉が柔らかく、細かく切れ込み、淡緑色で瑞々しいものが良品です。

その風味はパセリをマイルドにしたような甘みのある香りで、チャイブやバジル、タラゴンなどと共に、家禽、魚介、野菜料理の風味付けに用いられます。フランスでは「美食家のパセリ」と呼ばれ、オムレツ、サラダ、スープ、ドレッシングなどに広く使われています。フィヌゼルブというミックスハーブの主要材料としても知られ、キリスト教圏では復活祭前の料理にも使用されます。

パセリよりも傷みやすいですが、加熱調理すると香りが飛んでしまうため、仕上げに添えるのが一般的です。鶏肉や白身魚料理、ソース、卵料理などに彩りを添えたり、バターに混ぜてトーストに塗ったり、クリーム系のスープに添えるなど、様々な料理に活用できます。乳製品との相性も良く、栄養価も高く、β-カロテン、ビタミンC、鉄、マグネシウムなどが豊富に含まれています。

薬効と栽培

チャービルには消化作用、発汗作用、血行促進作用があるとされ、古くから薬用として利用されてきました。妊娠中の女性はチャービルの煎じ汁で入浴し、ローションは石鹸や血液浄化剤として、また酢に浸けたものはしゃっくり治療にも使われたという記録があります。

栽培においては、根が長く植え替えが難しいこと、冷涼で湿った環境を好むこと、高温乾燥した環境ではすぐに種ができてしまう（薹立ち）ことに注意が必要です。葉を収穫することで薹立ちを防ぐ効果もあります。

その他

チャービルはナメクジ避けとしても利用されることがあります。

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