スウィートナイター

ウェザー・リポート - スウィートナイター

ジャズ・フュージョンのパイオニアとして知られるアメリカのバンド、ウェザー・リポートが1973年に発表した通算3作目のオリジナル・スタジオ・アルバムが『スウィートナイター』(Sweetnighter)です。この作品は、彼らがコロムビア・レコードからリリースした初期の重要なアルバムの一つと位置づけられています。

本作のレコーディングは、1973年の2月上旬、具体的には2月3日から7日までのわずか5日間という短期間で行われました。この集中的なセッションから、当時のウェザー・リポートの生々しいサウンドが刻み込まれています。

『スウィートナイター』は、ウェザー・リポートの音楽性が大きな変革期を迎えていたことを示す、バンドの歴史において極めて重要な作品とされています。彼らのキャリア初期は、よりオープンな構造と自由奔放な即興演奏を中心としたアプローチが特徴でしたが、このアルバムでは、後の作品に見られるような、より明確な楽曲構成や形式を意識したスタイルへの移行が顕著に見られます。まさに、初期の実験的なサウンドと、後の洗練されたフュージョンサウンドとの間の橋渡し役となる作品と言えるでしょう。

サウンド面におけるもう一つの大きな特徴は、エレクトリックベースの使用が一層増加したことです。これまでの作品でもエレベは使用されていましたが、本作ではその存在感がより明確になり、バンドのグルーヴや音像に大きな変化をもたらしています。このエレクトリック楽器へのシフトは、当時のジャズ界全体の潮流とも符合しており、ウェザー・リポートが時代の最先端を行くバンドであったことを示唆しています。

また、このアルバムは、オリジナル・メンバーの一人であり、バンドのサウンドを初期から支えてきたベーシスト、ミロスラフ・ヴィトウスが、メインのベース奏者として参加した最後のスタジオ・アルバムとなりました。彼の貢献はこの作品にも色濃く反映されており、特にアコースティックベースとエレクトリックベースの両方でその技量を発揮しています。

本作に参加したミュージシャンは以下の通りです。

ウェイン・ショーター：テナーサックス、ソプラノサックス
ジョー・ザヴィヌル：エレクトリックピアノ、アコースティックピアノ、アープ2600・シンセサイザー
ミロスラフ・ヴィトウス：アコースティックベース (トラック 1, 2)、エレクトリックベース (トラック 3, 5)
エリック・グラヴァット：ドラム
ドン・ウン・ロマン：パーカッション
ムルガ・ブーカー：パーカッション
* アンドリュー・ホワイト：エレクトリックベース (トラック 1, 2, 4, 6)、イングリッシュホルン (トラック 3, 5)

特に注目すべきは、アンドリュー・ホワイトがエレクトリックベースとイングリッシュホルンの両方で参加している点です。ヴィトウスとホワイトのツインベース体制（曲によってはどちらか一方）は、当時のウェザー・リポートのベースサウンドに多様性をもたらしました。

『スウィートナイター』は、その音楽的な転換点としての重要性や、エレクトリック楽器への傾倒、そして初期メンバーの変遷といった点から、ウェザー・リポートのディスコグラフィーの中でも非常に重要な位置を占める作品と言えるでしょう。後の彼らのサウンドを予告する要素を含みつつも、初期の即興的なスピリットも感じさせる、魅力的な一枚です。

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