スウィートボックス

スウィートボックス（Sweetbox）は、ドイツを拠点に活動する音楽ユニットです。その中心はプロデューサー陣であり、時期ごとに異なる複数のボーカリストを迎える形で活動を続けています。ユニットのサウンドは時代とともに変化してきましたが、特にクラシック音楽の旋律を大胆にサンプリングした楽曲は彼らの代名詞となり、世界中で、とりわけ日本で高い人気を博しました。

歴代ボーカリストと音楽性の変遷

スウィートボックスの大きな特徴の一つは、その時々のサウンドに合わせてボーカリストが交代してきた点です。これまでに以下のアーティストがボーカルを務めてきました。

キンバリー・カーニー（Tempest、1995年）
ダシア・ブリッジス（1996年）
ティナ・ハリス（1997年 - 1999年）
ジェイド・ヴィラロン（後にソロ名義でJade Valerieとして活動、2000年 - 2006年）
ジェイミー（2008年 - ）
福原美穂（2013年）
* ヴィヴィ（Vivi、2020年）

ユニットの黎明期、初代のキンバリー・カーニーと2代目のダシア・ブリッジスがボーカルを務めた頃は、ヒップホップ色の強い楽曲が中心でした。1995年にリリースされたデビューシングル「Booyah - Here We Go」は、イタリアやシンガポールでチャート1位を獲得するなど、最初から国際的な注目を集めます。

転機が訪れたのは、3代目のボーカリストとしてティナ・ハリスが加入してからです。彼女の歌声によるシングル「Everything's Gonna Be Alright」（1998年リリース）は、ヨハン・セバスチャン・バッハの「G線上のアリア」をサンプリングした楽曲として世界中で大ヒットを記録します。この成功は、クラシック音楽を取り入れた独自のスタイルを確立する大きなきっかけとなりました。日本でも「Everything's Gonna Be Alright」はヒットし、その年の日本ゴールドディスク大賞・洋楽部門を受賞しています。

ティナの脱退後、2000年に4代目のボーカリストとしてカリフォルニア出身のジェイド・ヴィラロンが加入します。彼女の加入により、スウィートボックスの音楽性はクラシックサンプリングを基調としつつも、よりR&Bやポップスの要素が強まります。2001年のアルバム『Classified』は日本で40万枚を超えるメガヒットとなり、ユニットの日本での人気を不動のものとしました。2004年には、アルバム『Adagio』に収録された楽曲がPlayStation 2用ゲームソフト『ファイナルファンタジーX-2』の北米版テーマソングに採用され、日本でも話題となりました。また、同時期には日本の人気歌手、浜崎あゆみへ楽曲提供を行い、2006年のアルバム『Addicted』にはそのセルフカバーを収録するなど、日本の音楽シーンとの関わりも深めていきます。アルバム『Addicted』のタイトル曲は、スバル・レガシィ・ツーリングワゴンのCMソングとして日本で広く知られました。2005年には結成10周年を迎え、初のベストアルバム「THE GREATEST HITS」をリリースし、プラチナディスクに認定されるなど、この時期はスウィートボックスにとって商業的にも成功を収めた絶頂期と言えます。

新たな展開と再始動

2006年12月、長年ユニットを支えてきたプロデューサーのロベルト・”GEO”・ローザンとボーカルのジェイド・ヴィラロンが同時に脱退します。ジェイドはその後、GEOのプロデュースのもとソロ活動を経て、2009年にはGEOとの新プロジェクトETERNITY∞を始動させました。

スウィートボックスは活動休止期間を経て、2008年に5代目のボーカリストにジェイミーを迎え、新たなプロデューサー陣と共に再始動します。2009年にはエイベックスからワーナーミュージック・ジャパンへとレコード会社を移籍し、移籍第一弾となるアルバム『THE NEXT GENERATION』を発表しました。このアルバムには、日本の音楽プロデューサーである中田ヤスタカがリミックスを手がけた「Everything's gonna be alright(Next Generation 2009)」が日本盤ボーナストラックとして収録されています。

2013年には、6代目のボーカリストとして札幌市出身の日本人歌手、福原美穂が加入し、アルバム『#Z21』のレコーディングを行います。これはスウィートボックス史上初めて日本人ボーカリストが公式メンバーとして参加した事例となりました。

そして2020年、デビュー25周年を迎えた年に、プロデューサーのロベルト・”GEO”・ローザンと、多くの成功を共にしたボーカリストのジェイド・ヴィラロンがユニットに復帰するという驚きの発表がありました。さらに、新ボーカリストとしてヴィヴィ（Vivi）を迎え、再び3人体制での活動をスタートさせます。同年、最新アルバム『Da Capo』をリリースし、スウィートボックスは「初めから」という意味を持つアルバムタイトルの通り、新たな章を歩み始めています。

主なディスコグラフィ

スウィートボックスはこれまでに多数のシングルとオリジナルアルバム、ベストアルバム、企画盤などを発表しています。特に有名なのは前述の「Everything's Gonna Be Alright」や「Classified」などが収録されたクラシックサンプリング期の作品群です。

主なアルバムには『SWEETBOX』、『Classified』、『JADE』、『Adagio』、『ADDICTED』などがあり、ベストアルバムとしては『THE GREATEST HITS』や、日本独自企画の『Complete Best』などがリリースされています。時代やボーカリストによってサウンドの幅は広いですが、その洗練されたポップセンスとユニークなサンプリング手法は一貫しており、多くの音楽ファンに愛され続けています。

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