スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

ティム・バートン監督が手がけた『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は、2007年に公開されたミュージカル・ファンタジー・ホラー映画です。この作品は、1979年にスティーヴン・ソンドハイムとヒュー・ホイーラーによって生み出された同名のミュージカルを原作としており、圧倒的な映像美と音楽が調和した独特の世界観が魅力的です。

物語は、ヴィクトリア朝時代のロンドン・フリート街を舞台に、主人公、ベンジャミン・バーカーが復讐のために理髪店を再開するところから始まります。バーカーは、愛する妻ルーシーを手に入れようとしたターピン判事によって無実の罪を着せられ、オーストラリアへ流罪にされます。15年後、帰還した彼はスウィーニー・トッドと名乗り、ラヴェット夫人の経営する閑古鳥の鳴くミートパイ店で再び理髪師としての道を歩み始めます。

バートン監督はこのミュージカルを愛し、1980年代初頭から映画化を目指してきました。2006年にドリームワークスによって映画化のプロジェクトが進行され、ジョニー・デップが主人公トッド役、ヘレナ・ボナム＝カーターがラヴェット夫人役としてキャスティングされました。デップはこの作品のために独自の歌声を披露し、批評家からの評価は賛否が分かれましたが、キャラクターにふさわしい歌唱力だと好意的に受け止められました。

映画はアメリカとイギリスで大ヒットを記録し、ゴールデングローブ賞を受賞するなど、数々の賞を受けたことも注目に値します。しかし、アメリカでの興行成績は期待ほどではなく、特に日本では内容からR15+のレイティングを受けました。

物語の中では、復讐が描かれる一方で、トッドの過去や、ラヴェット夫人との複雑な関係が織り交ぜられています。彼はターピンへの復讐を果たすため、次々と顧客を殺めていくことになりますが、彼の行動は悲劇に繋がる宿命に満ちています。また、ラヴェット夫人はトッドの犠牲者の肉を使ったミートパイで繁盛を極めますが、彼女もまたトッドとの関係に苦悩し、自らの運命に翻弄されます。

映画は対称的なキャラクターたちを用いて、それぞれの欲望や絶望を描写し、観客に深い感情を呼び起こします。バートン監督は独自の視点を持ち込むことで、単なるホラーに留まらず人間の本質や感情に迫るストーリーを実現しました。

『スウィーニー・トッド』は、単なるミュージカル映画に留まらず、復讐、愛、狂気が交差する複雑な情感を持つ作品です。バートンのユニークな演出によって色づけされたこの映画は、多くの観客に影響を与え、今なお語り継がれています。

もう一度検索