スウェーデンのブランデンブルク侵攻 (1674年-1675年)

スウェーデンのブランデンブルク侵攻：選帝侯国の危機と反撃

1674年12月26日から1675年6月末にかけて、スウェーデン領ポメラニアから侵攻したスウェーデン軍が、手薄なブランデンブルク辺境伯領を占領しました。これは、スウェーデン・ブランデンブルク戦争の引き金となり、ヨーロッパの紛争を激化させる一因となりました。

侵攻の背景：オランダ戦争とフランスの策略

スウェーデン軍の侵攻は、オランダ戦争が背景にありました。ブランデンブルクは、フランスに対抗するため、2万人の兵を帝国戦争に派遣していました。これに対し、フランスは伝統的な同盟国であったスウェーデンを唆し、ブランデンブルク選帝侯に講和を強いることを目的に、辺境伯領を占領させたのです。

フランス国王ルイ14世は、ネーデルラントに対する報復として、オランダを孤立させるための外交を展開。1672年4月24日、スウェーデンと密約を結び、オランダを支援するドイツの領邦に対し、1万6千の軍を派遣するよう約束させました。

戦争の勃発とブランデンブルクの苦境

1672年6月、ルイ14世はオランダに侵攻し、オランダ戦争が勃発。ブランデンブルク選帝侯は、盟約に基づき、フランス軍と戦うオランダ軍を支援しました。1673年12月には、ブランデンブルクとスウェーデンは防衛同盟を締結しましたが、両国とも有事の際には同盟国を選ぶ自由を留保していました。

1674年5月、神聖ローマ皇帝がフランスに宣戦布告すると、ブランデンブルクも対仏戦争を再開。同年8月23日、2万の兵を擁するブランデンブルク軍は、辺境伯領からシュトラースブルクへ進軍を開始しました。辺境伯領には、アンハルト＝デッサウ侯ヨハン・ゲオルク2世が代官として残されました。

フランスは、長年の同盟国であるスウェーデンに対し、補助金の約束と買収工作を行い、ブランデンブルクとの開戦を促しました。スウェーデンの参戦目的は、手薄になったブランデンブルク辺境伯領を占領し、ブランデンブルク軍をオーバーライン地方とアルザスの戦域から撤退させることでした。

開戦準備と迫りくる脅威

スウェーデンは、侵攻軍をポメラニアに集結させ始めました。ベルリンには、部隊の動きが次々と報告されました。代官ヨハン・ゲオルク2世は、スウェーデン公使から月末までに2万のスウェーデン軍がポンメルンに展開するという情報を得ていました。スウェーデン軍の将帥、カール・グスタフ・ヴランゲルのヴォルガストへの到着が報じられると、スウェーデン軍の襲来が差し迫っているという報告が相次ぎました。

ヨハン・ゲオルク2世は、スウェーデン軍総司令官ヴランゲルに進軍の意図を確認させましたが、ヴランゲルは回答を拒否しました。11月中旬、代官はスウェーデン軍の襲来を確信しましたが、ベルリンではその原因や動機が不明なままでした。

スウェーデン軍の侵攻と辺境伯領の占領

1674年12月25日、スウェーデン軍は宣戦布告なしにウッカーマルクへ進出しました。スウェーデン軍は、ブランデンブルクがフランスとの交戦状態を終了させ次第、辺境伯領から撤退することになっていましたが、スウェーデンとブランデンブルクの完全な断交は意図されていませんでした。

スウェーデン軍の兵力は、文献によって1万3700から1万6000とされています。総司令官ヴランゲル元帥を補佐するため、ズィーモン・グルンデル＝ヘルムフェルトとオットー・ヴィルヘルム・フォン・ケーニヒスマルク両元帥が側近となりましたが、不明瞭な権限の付与は、軍の機動を遅らせました。

スウェーデンの参戦は、ヨーロッパで注目を集めました。ドイツの傭兵はスウェーデン軍に勤務を申し出、バイエルン、ザクセン、ハノーファーなどがスウェーデンとフランスの同盟に参加する用意があることを伝えました。

スウェーデン軍はプレンツラウに本営を置き、ブレーメン＝フェルデンで装備を整えた部隊と合流しました。一方、帝国軍と連合してフランス軍と戦い敗北したブランデンブルク軍は、シュヴァインフルトで冬営を敷いていました。選帝侯は、損害と冬の天候により、ウッカーマルクへの新たな遠征をためらっていました。

援軍なしには、ノイマルクやヒンターポンメルンの維持は困難でした。ブランデンブルクは、ケーペニック、ベルリン、シュパンダウなどに防衛線を形成。シュパンダウ要塞の守備隊は増強され、ベルリンの守備隊も5000名に増やされました。

しかし、スウェーデン軍はブランデンブルク軍の不在に乗じて、辺境伯領を広範に占領することを怠りました。軍税の徴収と傭兵の募集に集中し、兵力を2万名に増強しました。この行動の欠如は、スウェーデン国内における新旧両政権の対立に起因していました。

1675年1月末、ヴランゲルは軍をプレンツラウに結集し、オーダー川を越えヒンターポンメルンとノイマルクへ向かいました。スウェーデン軍は募兵のため各地を占領。ヒンターポンメルンは、ラウエンブルクなどを除いて占領されました。その後、スウェーデン軍はヒンターポンメルンとノイマルクで冬営に入りました。

1676年の初め、ブランデンブルクが戦争から離脱しないことが明らかになると、スウェーデンの宮廷は選帝侯への圧力を強めるべく、より厳しい占領政策を実施するよう命令。スウェーデン軍による占領政策の転換は、国土と民間人への弾圧を高める結果を招きました。

選帝侯の反撃とフェールベリンの戦い

ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムは、軍事大国スウェーデンに対し、同盟国の獲得を試みました。オランダとスペインは、選帝侯の要求によって対スウェーデン戦争への参加を宣言。選帝侯は、スウェーデンから辺境伯領を奪回することを決意しました。

1675年6月6日、選帝侯はマイン川の陣営を後にし、1万5千の兵を率いてマクデブルクへ向かいました。6月21日、ブランデンブルク軍はマクデブルクに到着。スウェーデン軍の偵察が不足していたため、ブランデンブルク軍の到着は察知されませんでした。

選帝侯は、スウェーデン軍が到達していたハーフェル川の戦線を、最も防備が薄かったラーテノウで突破することを決意。それによって、ハーフェルベルクとブランデンブルク・アン・デア・ハーフェルの町にいたスウェーデン軍を分断するつもりでした。

6月23日、ブランデンブルク軍はマクデブルクを発ち、6月25日にはラーテノウに到着。市街戦の末に、スウェーデン軍守備隊を撃退しました。

スウェーデン軍主力は、ブランデンブルク・アン・デア・ハーフェルからハーフェルベルクへと行軍していました。要衝ラーテノウの奪還は、戦況を大きく変化させました。スウェーデン軍は完全に奇襲され、ハーフェルベルクからエルベ川を渡ることが不可能になりました。

スウェーデン軍は、ブランデンブルク軍の実際の位置と兵力を把握していませんでした。6月27日、ナウエンにおいてスウェーデン軍後衛とブランデンブルク軍の前哨が衝突し、町は奪還されました。

6月28日、フェールベリンの戦いとして知られる対決で、スウェーデン軍は壊滅的な打撃を受けました。スウェーデン軍は夜陰に乗じて橋を渡りましたが、損害はプリグニッツとメクレンブルクを経由した撤退の間に増大しました。この戦いとそれに続く追撃戦で2400名が戦死し、300から400名が捕虜となりました。一方、ブランデンブルク側の死傷者は500名でした。

戦いの影響とその後

スウェーデン軍は厳しい敗北を喫し、無敗の名声を失いました。残存兵力は、ポメラニアのスウェーデン領に戻りました。

スウェーデンの戦況は、デンマークと神聖ローマ帝国が宣戦してきたことで悪化。北ドイツの所領は危機に瀕しました。スウェーデンは、自領への攻撃に対し防衛に集中することを強いられました。

一方、フランスの戦略目標は達成されました。ブランデンブルクは、ライン川の戦線から軍を撤収し、スウェーデンとの戦争に全力を注がざるを得なくなったのです。

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