スウェーデンの医療

スウェーデンの医療制度：高福祉国家を支えるユニバーサルヘルスケア

スウェーデンは、国民皆保険制度を基盤としたユニバーサルヘルスケアシステムを有する高福祉国家です。この制度は、中央政府、地方政府（ランスティング）、そして基礎自治体（コミューン）の三層構造によって運営されており、それぞれのレベルで責任と役割が明確に分けられています。その特徴は、地方分権と高品質な医療サービスの提供にあります。

医療提供体制：プライマリケアと専門医療の連携

スウェーデンの医療提供体制は、プライマリケア（家庭医、救急医療など）と専門医療が連携して機能しています。プライマリケアは、医療法で範囲が明確に定義されており、公的医療機関がその多くを担っています。OECDは、スウェーデンのプライマリケアを高い評価を与えており、その質と効率性、そして体制の整備を高く評価しています。専門医療へのアクセスもスムーズで、必要な医療サービスを迅速に受けられる仕組みが整っています。

伝統的には、家庭医（プライマリケア、産科、外来精神医療など）、救急医療、選定医療、入院医療、外来医療、専門医療、歯科医療の７つに分類されています。プライマリケアの約9割は公的機関の医師が提供しており、国民へのアクセスの容易さと質の均一性を確保することに貢献しています。

高齢化社会への対応：充実した介護サービス

スウェーデンは高齢化が進行しており、高齢者人口の割合は増加傾向にあります。そのため、高齢者の医療と介護サービスの充実が喫緊の課題となっています。スウェーデンの高齢者ケアは、ランスティングとコミューンが役割分担をして行っています。具体的には、ランスティングが病院を中心とした医療、コミューンが在宅介護や高齢者施設でのケアなどを担当します。

OECDはスウェーデンの介護政策を国際的にも最善のものと評価しており、人口あたりの介護従事者数はOECD諸国で最も多く、在宅ケアの充実も目覚ましいものがあります。不要な入院を避けるためのペナルティ制度なども導入され、社会全体の効率化と負担軽減にも貢献しています。

三層構造による行政運営：中央政府、ランスティング、コミューン

スウェーデンの医療制度は、中央政府、21のランスティング、そして290のコミューンという三層構造で運営されています。中央政府は医療政策の大枠を決定し、ランスティングは医療サービスの提供と財政運営、コミューンは高齢者や障害者のケアなどを担当します。

中央政府は、保健・社会政策省を中心に、医療政策の策定、診療ガイドラインの制定、医療サービスの評価などを行い、ランスティングの活動を監督します。ランスティングは、中央政府の方針に基づき、地域住民への医療サービスの提供を担い、医療機関の運営や医療従事者の配置などを決定します。コミューンは、より地域住民に密着したサービス提供を行い、高齢者や障害者の在宅ケア、精神疾患者のケアなどを担当します。各レベルの連携が密接に行われている点が特徴的です。

財政：高福祉高負担を支える税制

スウェーデンの医療制度は、高福祉高負担を特徴とする社会システムの一環です。GDPに占める税収の割合は高く、その大部分は社会保障費に充てられています。医療費の約7割は地方税である所得税を原資としており、ランスティングが徴収し、医療サービスの提供に充てられています。国民への負担は自己負担上限額が設定されていることで軽減されています。

自己負担：上限額の設定と公平性の確保

スウェーデンでは、医療費の自己負担は一定の上限額が設定されており、超過分は公費負担となります。これは、国民への負担を軽減し、経済的理由で必要な医療を受けられないという事態を防ぐための措置です。自己負担の上限額は年齢や医療サービスの種類によって異なります。19歳未満の子供は無料です。薬剤費にも上限額が設定されており、薬剤の購入費用が高額になる心配はありません。薬局の情報ネットワークにより処方薬の重複などを防ぐ仕組みも整っています。

歯科 医療：部分的な政府補助と無料化

歯科医療は、一般の医療保険制度とは別に運営されていますが、政府による補助金制度があり、19歳未満の子供は無料です。

休業補償制度：病気の場合の経済的支援

スウェーデンでは、病気になった場合の経済的な支援体制も整っています。医師の診断に基づき、病気休暇を取得した場合は、一定期間経過後、政府から給付金が支給され、国民の生活の安定を支えています。

まとめ

スウェーデンの医療制度は、地方分権と高品質な医療サービスを両立させた、世界的に高く評価されているモデルです。高齢化社会への対応、国民への負担軽減策も充実しており、国民皆保険制度の理想形ともいえるシステムです。しかし、財政負担の大きさや、地方間の医療サービス格差といった課題も存在します。これらの課題への対応も、今後の重要なテーマとなるでしょう。

もう一度検索