スウェーデン国鉄Ra形電気機関車

スウェーデン国鉄Ra形電気機関車：高速鉄道のパイオニア

スウェーデン国鉄（SJ）がかつて運用していたRa形電気機関車は、同国における高速鉄道黎明期を象徴する存在です。1940年代、自動車の普及に対抗するため、国鉄は急行列車の高速化を計画。その実現に大きく貢献したのが、このRa形電気機関車でした。

開発の背景と製造

モータリゼーションの進展により、鉄道の利用客減少が懸念された1940年代のスウェーデン。国鉄は競争力強化のため、急行列車の高速化に戦略を定めました。その実現に向け、地元企業のアセア（現在のABB）に試作車の製造を依頼。1955年、846号機と847号機の2両が完成しました。試作車の試験結果が良好であったことから、1961年には量産車として987号機から994号機までの8両が製造されました。形式名である「Ra」は、高速を意味する「Rapid」に由来するとされています。Rapidという愛称でも親しまれていました。

車体とデザイン

Ra形は全長約15メートルの車体に、運転台下部を前方に突き出した特徴的なデザインが採用されています。この形状は、北米の機関車を参考に設計されました。運転台の高さを上げることで、乗務員の視界を確保し、衝突事故の際にも乗務員の安全性を高める効果がありました。高速運転における安全対策として重要な設計思想でした。初期の塗装は、茶色地に青緑色の帯でしたが、1960年代後半にはオレンジ色を基調とした明るい塗装に変更されました。1972年にはライト類がシールドビーム化され、1983年には新型保安装置ATCの設置に伴い、側面の乗降扉の位置変更などの改良が施されました。試作車と量産車では、空気抵抗低減のためパンタグラフの位置がわずかに異なっています。

機器と性能

従来のスウェーデン電気機関車が蒸気機関車のようなロッド駆動を採用していたのに対し、Ra形は一般的なボギー台車方式を採用。各台車に搭載された電動機は、出力660kWで、車軸配置はBo'-Bo'。1両あたりの出力は2640kW、牽引力は200kNという高い性能を誇りました。保安装置としては、1983年にATCが搭載されました。

運用と保存

Ra形は、ストックホルムとヨーテボリ間の急行列車を中心に運用され、その後ノルウェーのオスロまで運転区間が延長されるなど、長距離路線でも活躍しました。ただし、当時のスウェーデン国鉄線の最高速度が130km/hであったため、Ra形の性能は十分に発揮されなかったという見方もあります。1987年に試作車の運用が終了し、1996年までに全車両が定期運用から離脱しました。

その優れた性能と特徴的なデザインから、スウェーデンの鉄道史における名機として高く評価されており、現在も5両が保存されています。イェブレのスウェーデン鉄道博物館や、ネッシェーのネッシェー鉄道博物館などで、間近でその姿を鑑賞できます。特に、トップナンバーである846号機は2006年に復元され、イベント列車の牽引などでも活躍しています。847号機も、運用離脱後しばらくは保線車両の牽引などに使用され、スウェーデンの各地で見かけることができました。

まとめ

スウェーデン国鉄Ra形電気機関車は、高度な技術と洗練されたデザインを兼ね備えた、同国の鉄道近代化に貢献した重要な車両でした。現在でも保存車を通してその姿を見ることができることは、鉄道史における貴重な遺産と言えるでしょう。

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