スクラッチタイル

スクラッチタイルの魅力と歴史

スクラッチタイルは、数多くの細い溝の模様を持つ独特な外装用タイルです。このタイルは特に建物の外壁に用いられることが多く、その特徴的なデザインから、外装建材としての人気が高まっています。かつては「スダレ煉瓦」と呼ばれていたこのタイルは、無釉であり、原料に含まれる鉄分により赤褐色や淡黄色の色合いを呈します。これにより、味わい深い外観を持つとともに、表面には数多の突起物によって溝が施されているため、光の反射が無く、柔らかい陰影を生み出します。これらの特徴が重厚感を演出し、建物に独自の存在感を与えるのです。

スクラッチタイルの特徴

スクラッチタイルは、釉薬を使用しないため、素朴でナチュラルな質感を持っています。この無釉の特性は、非常に清潔感があり、時を経ても色あせることなく、周囲の自然環境にも好影響を与えます。また、湿式成形によって作られているため、堅牢性や耐久性も兼ね備えています。さらに、光に対する反射が少ないため、タイルのデザインにおいて陰影を強調させ、立体感や重厚感を感じさせることができます。特に、夕暮れ時や雨天の日に、その美しさを一層引き立てます。

歴史的背景

スクラッチタイルは、煉瓦からタイルへと移行する過渡期において重要な役割を果たした建材のひとつです。特に、日本では帝国ホテル旧本館（ライト館）にこのタイルが採用されており、1900年代初頭から多くの建築に用いられてきました。この建物は、世界で初めて外壁にスクラッチタイルを取り入れた例とされています。1923年に発生した関東大震災の際、このホテルは無傷であったことから、震災復興期には全国的にこのタイルが普及しました。

1920年代後半から1930年代にかけて、特に官公庁や大学、金融機関などのニュータウン開発において、このタイルが好まれる傾向が強まりました。1928年から1931年にかけて、その人気は最高潮に達し、多くの重要な建物にスクラッチタイルが使用されました。

代表的な作品

スクラッチタイルを使用した著名な作品には、以下のようなものがあります。

• - 帝国ホテル旧本館（ライト館）

フランク・ロイド・ライトによる設計で、1923年に竣工。現在は博物館明治村に移築されており、玄関部分は登録有形文化財として保存されています。

• - 東京大学本郷キャンパス

内田祥三設計によるもので、1920年代の大正末期から昭和初期にかけて完成。

• - 石川県政記念しいのき迎賓館

1924年に竣工、矢橋賢吉設計によるものです。

• - 兼松講堂

伊東忠太設計、1927年に完成し、登録有形文化財に指定されています。

これらの作品は、スクラッチタイルの美しさと実用性を証明するものです。他にも多くの重要文化財や登録有形文化財がスクラッチタイルを採用しており、その存在感は時代を超えて今も愛されています。スクラッチタイルは、単なる建材としての枠を超えて、建築文化において重要な役割を果たし続ける存在です。

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