スコットランドの地方行政区画

スコットランドの地方行政区画と自治制度

スコットランドの地方行政は、32のカウンシル・エリアに区分されています。それぞれのエリアには、単一自治体であるカウンシルが設置され、地方行政の中核を担っています。カウンシルの下には、コミュニティ・カウンシル・エリア（以下、コミュニティ）が存在しますが、コミュニティは自治権を持たず、カウンシルを補佐する役割を担っています。

カウンシル・エリアとカウンシル

スコットランド全土は、1996年の地方政府再編により32のカウンシル・エリアに再編されました。それ以前は、リージョンとディストリクトの二層構造でしたが、統合により効率的な行政運営が実現しました。カウンシルは、スコットランド・ゲール語で「comhairle」と呼ばれ、アウター・ヘブリディーズのカウンシルはこれを正式名称としています。

コミュニティとコミュニティ・カウンシル

カウンシル・エリアはさらに、コミュニティに細分化されています。コミュニティは、住民の意思によって設立されるコミュニティ・カウンシルを持つことができます。しかし、ウェールズのコミュニティ・カウンシルとは異なり、スコットランドのコミュニティ・カウンシルは法的な権限を持たない諮問機関です。

コミュニティ・カウンシルの制度は1975年に導入され、当初はディストリクト・カウンシルの管轄下にありました。歴史的にはシビル・パリッシュ（行政教区）の区画を踏襲していますが、必ずしも一致しません。全スコットランドには約1200のコミュニティが存在し、地域住民の意見をカウンシルに反映させる重要な役割を果たしています。

コミュニティ・カウンシルは、地方税の徴収権限はなく、カウンシルからの補助金によって運営されています。しかし、オークニーやシェトランドなど一部地域では、自治的な役割と予算が与えられており、独自の伝統を継承するコミュニティ・カウンシルもあります。

歴史的変遷

スコットランドの近代的地方行政制度は、1889年のスコットランド地方政府法制定から始まります。当初はカウンティ、バラ（自治都市）、パリッシュを単位とした行政が行われていましたが、1890年にはカウンティ・カウンシルが設置され、公選議員によって運営されるようになりました。その後、1930年、1947年と大規模な再編が行われ、行政単位や組織が変更されてきました。

1975年には、リージョンとディストリクトの二層構造が導入されましたが、1996年には再び再編され、現在の32の単一自治体（カウンシル・エリア）体制が確立しました。この再編により、地方行政の効率化と簡素化が図られました。

その他の行政区画

スコットランドには、地方行政以外にも様々な行政区画が存在します。

シビル・パリッシュ: スコットランド国教会の教区を起源とする区画で、現在は統計やEUの共通農業政策などに用いられています。自治権はありません。
カウンティ: 歴史的な行政区分で、現在の地方行政では使用されていませんが、土地登記（レジストレーション・カウンティ）や典礼（レフテナンシー・エリア）などに用いられています。
リージョン: 1975年から1996年までの地方行政区分で、現在も一部行政機関の管轄区分として使用されている場合があります。
ディストリクト: 1975年から1996年までの地方行政区分で、現在では廃止されていますが、警察や消防などの管轄区分として使われ続けている場合があります。
* シェリフダム: 裁判行政上の区分で、6つの区域が存在します。

まとめ

スコットランドの地方行政は、歴史的背景を反映した複雑な経緯を経て、現在の32のカウンシル・エリアによる単一自治体体制が確立されました。カウンシルとコミュニティ・カウンシルは、住民のニーズに応える地方行政運営に重要な役割を担い、地域社会の発展に貢献しています。それぞれの行政区画は、歴史的経緯や行政ニーズに基づき、現在も様々な場面で使用されています。

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