スコットランド政府

スコットランド政府：スコットランドの自治と行政の中枢

スコットランド政府は、イギリス王国を構成するスコットランドにおける自治政府です。イギリス政府から様々な権限を委譲されており、スコットランド独自の政策を立案・実行する重要な役割を担っています。その歴史、組織、権限、そして名称変更の歴史について詳しく見ていきましょう。

スコットランド政府の設立と権限

1997年の住民投票を経て成立した1998年スコットランド法に基づき、1999年7月1日、スコットランド行政部として発足しました。当初は「スコットランド行政部」という名称でしたが、2000年代初頭から「スコットランド政府」という呼称が一般的になり、2012年スコットランド法で正式に名称が変更されました。

スコットランド政府の権限は、1998年スコットランド法（2012年、2016年の改正を含む）で定められています。イギリス政府が留保する分野を除く、ほぼ全ての行政分野を管轄します。

1998年スコットランド法で委譲された主な権限：

医療
教育
司法
交通（一部はイギリス政府が留保）
環境
警察
農村地域
住宅

2012年と2016年の法改正で追加された権限：

所得税（控除額を除く）、不動産取得税、埋立税など、課税権の一部
酒気帯び運転の基準
スコットランド議会選挙・地方議会選挙
社会保障の一部
王室財産

イギリス政府が留保する主な権限：

移民・国籍
憲法（合同法、国王、権限委譲）
外交・国際開発
国防・安全保障
経済政策
貿易・産業
エネルギー政策
福祉（一部を除く）
検疫
官僚制
消費者保護
著作権行政
通信・郵便
放送
税（一部）
通貨
年金

スコットランド議会の法案の多くはスコットランド政府が提出しており、スコットランドにおける立法に大きな影響力を持っています。

スコットランド政府の組織

スコットランド政府は、首相（第一大臣）を頂点とした内閣と、その他の閣僚、そして多数の公務員から構成されます。

首相： スコットランド議会で選出され、国王が任命します。

閣僚： 首相が指名し、議会が承認します。スコットランド議会の議員であり、議会に対して責任を負います。閣内大臣と閣外大臣があり、それぞれ異なる役割を担います。

法務長官・法務次官： 議員以外から選ばれることもあります。首相が指名し、議会が承認した上で国王が任命します。

内閣： 閣僚会議。政策決定の中枢であり、毎週閣議が開かれます。

内閣委員会： 内閣の下に設置される委員会。特定の政策分野について議論・決定を行います。

公務員： 大臣を補佐し、行政の実務を担います。約16000人が働いています（2012年報告）。

事務次官： スコットランド政府公務員のトップ。首相と内閣を補佐します。

局（Directorate）： 省に相当する機関。行政の実務を担います。

局群（Directorate-General）： 複数の局を束ねる組織。

執行機関： 政府の特定分野の業務を担う機関。

非政府部門公共機構： 政府とは別に設置された公共機関。行政、助言、審判、公営企業など多様な役割を担います。

スコットランド政府の庁舎と海外事務所

本庁舎はエディンバラのセント・アンドリュース・ハウス。その他、エディンバラ市内やグラスゴーなどに支庁舎があります。ロンドンにはドーバー・ハウス、ブリュッセル、ワシントンD.C.、ベルリン、北京などに海外事務所を置いています。

スコットランド政府の名称変更

当初は「スコットランド行政部」でしたが、2001年にスコットランド首相が「スコットランド政府」への改名を提案。2007年にスコットランド国民党政権下で事実上改称され、2012年スコットランド法で正式に「スコットランド政府」に改称されました。同時にロゴも変更されました。

スコットランド政府は、スコットランドの自治と発展において中心的な役割を果たす重要な機関です。その組織や権限、歴史を理解することは、イギリスとスコットランドの関係、そしてスコットランドの政治を理解する上で不可欠です。

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